アフターコロナの小売像その1 「ドライブスルー」の可能性
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本でもドライブスルー型の買物が注目されている。ドライブスルーといえば、「マクドナルド」をはじめとしたファストフード店が取り入れているものの、小売の世界では馴染みが薄かった。だが、今回のコロナ禍で“三密”を避ける買物方法として脚光を浴びつつある。米国では、ネットスーパーと並んで広く利用されているドライブスルー。アフターコロナの日本でドライブスルー型の小売は定着するか――。
コロナ禍で誕生した「ドライブスルー八百屋」とは
「現在、東京都大田区の京浜島のドライブスルーでは、1日当たり600件程度、注文商品の引き渡しがあります」
そう話すのは「ドライブスルー八百屋」を展開するフードサプライ(東京都)の担当者だ。
ドライブスルー八百屋とは、その名の通り、ネットなどで予約した青果をドライブスルーで受け取れるサービスである。販売するのは、契約農家から仕入れた青果物や米をセットにした商品で、地域によっても価格は異なるが、東京都では各種青果のセットを3500円、お米と青果物のセットを5000円で販売する。
フードサプライは外食・中食産業向けの青果物の卸売りを手掛ける企業である。緊急事態宣言が発令されて以降、卸先である外食産業が営業休止、営業時間短縮を余儀なくされており、契約農家も大打撃を受けている。これを支援するために同社は2020年4月、一般消費者に向けたドライブスルー販売を開始した。
外出自粛が要請される現在、食品スーパーの店頭は“3密”状態になっているケースが多く、ネットスーパーは混雑状態が続いている。こうした状況下、開始したばかりのドライブスルー八百屋も「販売は好調に推移している」(同社担当者)とのことで、緊急事態が延長されこともあって、さらなる需要を獲得すべく、販売拠点を増やすとしている。
フードサプライでは現在、東京都大田区、国立市、千葉県野田市、大阪府大阪市などでドライブスルー八百屋を展開している。5月初旬にはこれを京都、兵庫、広島、福岡などに広げるという。また、野菜だけではなく「鮮魚や精肉の販売も開始する」(同社担当者)とし、品揃えの拡充にも力を入れる方針とのことだ。
百貨店もドライブスルーを導入
営業自粛が続く百貨店業界もドライブスルーによる受け渡しサービスを始めている。千葉県柏市の「柏髙島屋」では、4月29日から同店の駐車場で事前に注文を受けた青果物の受け渡しを始めた。
キューリ、ナス、トマト、レタスなど30種類以上の野菜のほか、リンゴやイチゴといった果物7種類を前日までに電話で注文すると、翌日以降の午前11時から午後2時の間に受け取れる。5月からは「横浜髙島屋」「港南台タカシマヤ」(いずれも神奈川県横浜市)でも同様の取り組みをスタートしている。
百貨店業界では、一部の「デパ地下売場」を除き、休業している館が多く、“稼ぎ頭”だったインバウンド消費も激減している。今回のようなドライブスルー販売で売上高の落ち込みを補完できるわけではなさそうだが、感染リスクに配慮した方法で販売を継続することで客離れを最小限に抑えたいという思惑もあるとみられる。