ヤフー(東京都)の親会社であるZホールディングス(東京都:以下、ZHD)は24日、オンライン記者会見を開催し、物流・配送を強化する新戦略を発表した。あわせてZHDは、ヤマトホールディングス(東京都:以下、ヤマト)と業務提携することで基本合意したことを発表。ZHDが描く新コマース戦略「X(クロス)ショッピング」構想とはどのようなものなのか。
ヤマトと業務提携を締結
「国内No.1ECモール」を目標に掲げ、アマゾンジャパン、楽天(東京都)を猛追するZHDが、EC事業の基盤をトータルで拡充する。
今回の発表の目玉の1つがヤマトとの業務提携。この提携により、「Yahoo!ショッピング」、「PayPay(ペイペイ)モール」に出店するストア向けに「フルフィルメント」、「ピック&デリバリー」と言う2つの新物流サービスをスタートする。
ヤマトがこれまで築いてきたネットワークを生かし、「フルフィルメント」では受注、ピッキング、梱包、出荷までの一連の業務を、「ピック&デリバリー」では梱包、出荷、出荷後の配送までをヤマトが代行する。これによりZHDは、モールに出店するストアの業務的な負担を軽減し、ヤフーのショッピングモールに出店する魅力を高めるとともに、商品の翌日配達率の向上をめざす。
これらのサービスは3月24日に受付開始、6月30日からサービスを開始する。ヤフーでは同サービスを利用したストアの商品を購入した人限定で送料相当にあたる「PayPayボーナスライト」を付与し、“実質送料無料”とする期間限定のキャンペーンも実施することを発表した。
「Xショッピング」とは
これとあわせてZHDは、ECとリアル店舗の垣根を限りなくなくす新コマース戦略「Xショッピング」構想を発表した。
ZHDの川邊健太郎社長は会見で「新型コロナ禍でECの局面が変わった」と語り、いっそうECシフトが進んだという認識を示した。この局面で同社は、EC事業の革新を図り、消費者、さらにストアに出店する事業者の利便性を高めることで、モールの拡大を加速していく狙いがありそうだ。
具体的には「PayPay(ペイペイ)モール」における実店舗の在庫連携機能の提供である。すでにヤマダ電機(群馬県)など一部ストアで在庫の有無を表示する取り組みを始めているが、「店があるから、EC全体が盛り上がってくる」(小沢隆生ZHD執行役員)とみて、今後はグループ会社のZOZO(千葉県)運営の「ZOZOTOWN」に出店するショップに対しても、ショップ側の了承を得たうえで実店舗在庫共有情報を共有するとしている。
Xショッピングでは店の在庫をマップ上に表示、実店舗での購入、ECで決済して購入に加え、今後は在庫を確認できる実店舗を増やし、ECで決済して店頭で受け取ることができるようにする。
またXショッピングでは、グループのZOZO(千葉県)との連携を強化。すでにZOZOでは「ZOZOTOWN」出店ブランドの在庫情報を一定数保有しているが、これを出店ブランドの了承のもと実店舗在庫共有情報として活用していく。これにより、ECの課題だった「着てみたい」「触ってみたい」「今すぐ手に入れたい」というニーズにも応えられるようにする。
このようにECと実店舗を融合することで、ZHDではECと実店舗市場を合わせた150兆円の市場にリーチできるようになるとみる。
さらにヤフーは、ECサイト運営事業者向けにショッピングシステム「XSエンジン」を外部に開放する。一般的にECを手掛ける事業者は、システム投資、技術開発などに継続的な費用が発生するが、「XSエンジン」を提供することでこれらの課題の解決に寄与する考えだ。同システムではPayPayモールやYahoo!ショッピングにも出店できるほか、Xショッピング、ペイペイによる決済などヤフーが蓄積したノウハウを活用できる。
Yahoo!ショッピングが2013年に「Eコマース革命」を宣言して以降、ショッピング事業取扱高は3倍にまで増加している。「(EC業界)1、2位の背中がかなり近くに見えている」と確かな手応えを示したZHD川邊健太郎社長。矢継ぎ早にM&Aと提携、新戦略を打ち出しており、EC国内1位に向け、着々と歩みだしている。