イオンVSセブン&アイ 株主優待が示す2社の「大きな差」とは

兵藤 雄之
Pocket

株主優待の新設・拡充が相次ぐ

 2023年以降で、株主優待制度を新設したり、その内容を拡充したという小売業態企業は、イオン、セブン&アイを含め、10社以上ある。

 新設企業は、良品計画(2023年4月公表)、サンクゼール(2023年8月公表)、マルヨシセンター(2023年9月公表)、ジェーソン(2024年1月公表)、セブン&アイ(2024年4月公表)の5社。公表時以降の株主数が明らかになっていないセブン&アイ以外の4社は、いずれも公表後に個人株主数を増やしている。サンクゼールは1期前から3倍超、マルヨシセンターは同約4倍、ジェーソンは同約2.3倍になった。もともと母数の大きい良品計画は4%程度の増加率だが、5000人増になっている。

 拡充企業の変更内容はさまざまだ。

 あまり売買を繰り返さない個人の保有を意識した長期保有(1年以上、3年以上など)時の優待内容の拡充(イオン北海道、エディオン、平和堂)もあれば、しまむらやスギホールディングスのように、株式分割後にも従来と同じ保有株数に応じて優待を実施するケースもある(分割された分、優待内容も拡大する)。

 2024年1月より、NISA制度(少額投資非課税制度)が拡充された(新NISA)。今年に入ってからの株価上昇はその影響が大きいと言われており、また長期的な資産形成目的で新NISAを活用する層が現役世代にも広がりつつある。そうしたタイミングでの株主優待の新設、拡充には、自らのファン層(=買い物利用客)との関係をよりグリップしたいという思いもあるのだろうか。

図表②-1 株主優待新設企業

※2023年以降、小売業のみ

企業名(証券コード) 良品計画(7453) サンクゼール(2937) マルヨシセンター(7515) ジェーソン(3080) セブン&アイ・ホールディングス
(3382)
業種 専門店 専門店 スーパーマーケット ディスカウントストア コンビニ、GMSなど
公表日 2023年4月公表 2023年8月公表 2023年9月公表 2024年1月公表 2024年4月公表
株主優待内容 100株以上の保有で、買い物時に5%割引が適用される優待カードを進呈 100株以上を、半年以上継続保有で、
100株の場合、2500円相当の自社商品詰合せギフト+店舗またはオンラインショップで利用可能なサービス券500円分、または優待品相当額の寄付
100株以上で、優待券50枚(1万円相当、1000円以上の買い物時に1000円ごとに1枚200円使用可)またはVISAギフト券10枚(5000円)から。
*長期保有株主優待:300株以上、3年以上保有の場合、同社オリジナル「小豆島手延素麵」1箱贈呈
500株(5単元)以上;同社店舗で利用できる株主優待券8000円分(1000円×8枚)または、ナチュラルミネラルウォーター「尚仁沢の天然水」(500ml24本入×4箱) 100株以上
継続保有期間3年未満:セブン&アイ共通商品券2000円分
同3年以上:2500円分
直近期の個人株主数と
所有株式数の割合
132,903人(2023/8/31時点) 11,573人(2024/3/31時点) 1,051人(2024/2/29時点) 4,127人(2024/2/29時点) 62,471人(2024/2/29時点)
20.89% 67.79% 48.29% 65.23% 9.33%
1期前の個人株主数と
所有株式数の割合
127,513人(2022/8/31時点) 3,685人(2023/3/31時点) 267人(2023/2/28時点) 1,803人(2023/2/28時点) 72,151人(2023/2/28時点)
26.49% 55.65% 41.65% 64.87% 10.95%
2期前の個人株主数と
所有株式数の割合
58,038人(2021/8/31時点) ※2022年12月上場のためデータなし 269人(2022/2/28) 1,855人(2022/02/28) 72,108人(2022/2/28時点)
14.14%   40.93% 64.54% 11.41%

図表②-2 主な株主優待拡充企業

※公表順

企業名(証券コード)

イオン北海道(7512) クスリのアオキホールディングス
(3549)
しまむら(8227) エディオン(2730) さいか屋(8254)
業態 GMS ドラッグストア アパレル専門店 家電量販店 百貨店
公表日 2023年1月公表 2023年10月公表 2023年12月公表 2024年2月公表 2024年2月公表
株主優待内容 100株以上の保有で「株主優待券」(2500円相当、保有株数により段階的に金額は増額)。
★拡充:200株以上の保有で優待内容が拡充(200株保有で5000円相当)
500株以上、3年以上継続保有で、さらにギフトカードを進呈(500~1999株の場合、2000円分)
300株以上の保有だったものを100株以上に変更、内容も拡充。
100株以上200株未満の場合、株主優待カード(買い物金額から3%割引)、Aocaギフトカード(2000円分)、Visaギフトカード(1500円分)、地方名産品(2000円相当)から、一つを選択
2024年2月20日付で、1:2の株式分割を実施。従来と同基準の株主優待のため、実質、2倍の内容に拡充。
100株保有で、2000円相当額の買物券
100株以上の保有でギフトカード3000円分(保有株数による金額の増額あり)
★拡充:2年以上および3年以上の長期保有加算額を追加。
100株保有の場合、1年以上1000円分、2年以上2000円、3年以上3000円が追加される
100株以上で、買い物優待券、健康食品・化粧品に加え、さいか屋横須賀店内の飲食店利用時の割引券(年間1万円、食事代1000円ごとに500円の割引)を追加
直近の個人株主数と
所有株式数の割合
90,678人(2024/2/29時点) 18,786人(2023/5/20時点) 10,922人(2024/2/20時点) 150,282人(2024/3/31時点) 2,281人(2023/8/31時点)
21.02% 32.60% 14.78% 56.36% 40.79%

 

企業名(証券コード) 平和堂(8276) スギホールディングス(7649) はるやまホールディングス(7416) サツドラホールディングス(3544) JMホールディングス(3539)
業態 GMS ドラッグストア アパレル専門店 ドラッグストア スーパーマーケット
公表日 2024年2月公表 2024年2月公表 2024年2月公表 2024年3月公表 2024年6月公表
株主優待内容 100株以上499株の所有で、1000円の優待券だったところを、300株~499株の所有は3000円に増額。
2年以上継続で300株以上所有の場合、1000円の優待券、500円相当のギフトカードを追加で贈呈
2024年3月1日付で1:3の株式分割を実施。従来の3分の1の投資額から株主優待制度を受けられるように。
100株以上(300株未満)の保有で、1000円相当の優待券またはスギポイント2000ポイント(1000円相当)
※分割前に100株保有していた場合、3000円相当の自社優待券になる
100株~500株未満の保有に場合、商品割引券(2枚)の割引率が、「15%」から「20%」に拡大。
ただし、継続保有期間1年以上に変更
従来の優待券のほかに、ポイントプログラム「EZOポイント」の選択も可能。社会貢献の一環として、公益財団法人そらぷちキッズキャンプへの寄付も選択肢に追加。
100~299株保有で、オンライン申し込みの場合、特別優待券(またはEZOポイント)500円分、5%OFFの優待クーポン(またはカード)、QUOカードPay500円分、そらぷちキッズキャンプ寄付500円から、2つ選択
100~499株の場合、従来は2500円相当の精肉関連商品のみだったが、変更後は
2500円相当の精肉関連商品、南魚沼Ⅲこしひかり2㎏、同社グループ商品券2500円分(500円×5枚)から1つ選択に
直近の個人株主数と
所有株式数の割合
13,834人(2024/2/20時点) 34,692人(2024/2/29時点) 40,718人(2024/3/31時点) 11,740人(2023/5/15時点) 28,967人(2023/7/31時点)
30.30% 8.58% 68.75% 53.13% 81.71%
1 2

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態