第6回 創業時より社会問題とビジネスをつなげてきたSDGsの先進企業=サラヤ
原料の生産地・ボルネオの環境保全活動を05年より
正確に言えば、サラヤが「ヤシノミ洗剤」などの原料として使うパーム油はごくわずかだ。世界中で使われているパーム油の約85%はお菓子やインスタント食品などの食用に使われており、残りの約15%が化粧品や印刷用インクなどの非食用。そのうち洗剤に使われているのは数パーセント程度であり、大半は大手メーカー。しかしヤシの油の象徴としてヤシノミ洗剤が取り上げられたのである。とはいえ、サラヤがパーム油を使っている事実は変わらない。
そこでサラヤは環境問題の現実から目を背け「パーム油を使わない」と宣言する安易な解決法を放棄。仮にサラヤが使わなくなったとしても、世界中がパーム油を使い続ける限り、熱帯雨林の伐採も野生動物の絶滅危機も防げない。また、パーム油産業はマレーシアにとって外貨獲得の重要な手段であり、パーム油を否定することはできないことから、現実的に解決するために、この問題にきちんと向き合うことを選んだ。これが、サラヤがSDGsに取り組むようになったきっかけだ。
そもそも問題の根底にあるのは、違法労働と違法伐採を繰り返して、安価なパーム油がつくられていることだ。ルールを守ってパーム油がつくられるのであれば、環境は破壊されず、現地の産業も継続でき、今後も世界中の人たちがパーム油を使うことができる。
そこでサラヤは、2005年1月、ボルネオの環境保全活動を行うことを表明し、日本企業として初めてRSPOに加盟した。RSPOとは「持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundtable on SustainablePalm Oil)」の略称であり、人権や環境に配慮したパーム油産業のルールづくりについて話し合う国際会議のことである。サラヤは10年にRSPO認証油をいち早く商品に採用。以来、使う原料の100%認証に取り組んでいる。
一方で、06年にはマレーシア・サバ州政府公認の国際NPO「ボルネオ保全トラスト(BCT:Borneo Conservation Trust)」設立に尽力。BCTではアブラヤシ農園によって失われた熱帯雨林の土地を買い戻し、野生動物が行き来できる森の再生をめざしている。このプロジェクトは「緑の回廊計画」と呼ばれ、サラヤはこの計画に「ヤシノミ洗剤」シリーズの売上*の1%を還元。日本に暮らす消費者もボルネオの環境保全活動に参加できるシステムを確立した。
*メーカー出荷額
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