沈まぬアパレルその2 ユニクロとしまむらの「差」
ユニクロとしまむら、給与体系の違い
それを象徴するのが、給与体系だ。ユニクロでは、ランクごとに昇給していく評価システムが確立されている。「店長」になると年収が1000万円を超えることも少なくない。「仕事はハード」という声も聞かれるが、明確に能力が給与に反映されるようになっている。
ただ、努力をしなければ、店長であっても年収400万円台にとどまるケースもあるいう。「格差をつけすぎ」との批判もあるが、現場の長である店長が知恵を絞って顧客に向き合わなければ、売上も評価も上がらない。
一方のしまむらは、こうした給与体系は採用されていない。同社は仕入れ商品を低価格で販売するため、本部が集中的に店舗をコントロールしコストを削減することで、店舗網と売上を拡大してきた経緯がある。
しまむらはかねてより発注を自動化したり、商品の店舗間移送も自動で指示を出すようなシステムを構築してきた。最近は、値下げ指示も自動化する方向に動いているとされ、むしろ現場になるべく知恵を求めないようにしているという話も聞く。
当然、現場の仕事自体は以前と比べるとラクになっているのだろうが、「自動化で捻出したマンパワーを、接客をはじめとしたほかの業務に適切に振り向けられているのか」(アパレル業界関係者)という指摘もある。
「接客の時代」がやってくる?
本部による集中コントロールは、しまむらのビジネスモデル、または文化となっており、簡単に変更できる代物でもないだろう。しかし人口減少時代では、客1人からの少しの取りこぼしが積み重なり、膨大なロスとなって降りかかってくる。セブン&アイ・ホールディングス前会長の鈴木敏文氏が、電撃退任する直前まで「(今後は)接客の時代だ」と力説していたことが記憶に残る。
ユニクロは、よく言えば能力主義的な人事考課で、日本を飛び出しアジア中で事業を拡大している。海外事業においても、この能力主義が成長の原動力になっていることは間違いない。
「現場力」とは少々手垢のついた言葉である。だが、リアル小売がこれからますます必要とされる力であるのかもしれない。