ソフトバンク、ヤフーの新流通革命3 「孫正義の参謀」が明かす、孫が仕掛ける流通「天下三分の計」とは!?
米携帯電話市場と酷似? 現在の国内EC市場
こうした「三国志」の構図は、13年にソフトバンクが米国の携帯電話事業者大手、スプリント(Sprint)を買収したときの状況とよく似ている。当時、米国の携帯電話市場は、AT&Tモビリティ(AT&T Mobility)とベライゾン(Verizon)がそれぞれ市場シェアの約30%を占め、16%のスプリントと10%のティーモバイル(T-Mobile)がこれに続いていた。孫社長は「スプリントとティーモバイルを合わせ第3極をつくれば、米国の携帯電話市場で十分戦える」と考え、スプリントの買収を決断した。
同様に、日本のEC市場においても、ヤフーにZOZOを加えることでアマゾンや楽天に対抗できると判断したと思われる。今後も、ソフトバンクの潤沢な資金力を生かし、Zホールディングスを通じて同様のM&A(買収・合併)を実行していく可能性が高い。
ローカライズ戦略で アマゾン・楽天と勝負!
長期視点でEC事業を成長させるためには、自社の物流網が重要な役割を担う。Zホールディングス傘下のアスクル(東京都/吉岡晃社長)は物流網を自社で構築している。ヤフーが日本での「アマゾンモデル」のローカライズを志向するならば、物流網とその運営ノウハウを有するアスクルは必要不可欠な存在だ。 国内ナンバーワンの顧客数獲得をめざすモバイル決済サービス「PayPay(ペイペイ)」の存在も大きい。
プロファイリングによる「個別化」においては、ユーザーごとの購買履歴や消費行動にまつわるデータを大量に保有することが競争優位につながる。グーグルやアマゾンが膨大なデータを保有しようとしているのはそのためだ。この観点からいえば、すでに国内2000万人以上のユーザーを抱えるPayPayを保有するソフトバンクには、大きな優位性があると言える。
「アマゾンエフェクト」が世界各地に広がるなか、ヤフーは、日本の商慣習に根ざし、日本語でコミュニケーションできるプラットフォームを構築することでこれに対抗していくと思われる。アマゾン、楽天、ヤフーの「三国志」でどの企業が生き残るかによって、日本の小売業界の命運も決まってしまうかもしれない。
※本特集は、『ダイヤモンド・チェーンストア』誌12月1日号特集から一部コンテンツ抜粋の上、加筆・再編集したものです