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ソフトバンク、ヤフーの新流通革命2 LINEとの統合で必要な欠片はリアル店舗だけになった

「ソフトバンク、ヤフーの新流通革命」オンライン特別編集版、第2回。リアル店舗決済への巨額の投資に、ZOZOの子会社化、そしてLINEとの統合というように、多額の資金を流通ビジネスに投じているソフトバンクグループ(東京都:以下、SBG)。今回は彼らがめざす「新・流通革命」とは何かを解説する(第3回は12月3日公開)。

「新・流通革命」とはなにか

 1で説明した、矢継ぎ早かつ莫大な投資を行う “流通戦略”の先に、孫正義氏が見据えているものとは何だろうか。

 SBGは「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を掲げ、AIIoTなどの領域で活躍する企業に積極投資している。こうした新技術によって、流通業ではどのようなことが可能になるのかを考えると、それが見えてくる。

 元ソフトバンク社長室長で、側近として孫正義氏を長年支えてきた嶋聡氏は、「個別化」である、と指摘する。

 「個別化」とは、AIIoTによって消費者のデータを収集・分析し、1人ひとりの嗜好やニーズに合わせ商品を販売することを指す。嶋氏は「仮に、SBGが『新・流通革命』を起こすならば」と前置きしたうえで、「消費者の満足度を高めながら、小売業の収益性を向上させることが可能になるだろう」と予測する。

 1960年代、ダイエー創業者の中内功氏らが旗手となった「流通革命」では、流通ルートを簡素化することで、豊富な品揃えと低価格が実現された。これにより、小売業は多くの顧客を集めることにこそ成功したものの、時代の移り変わりとともに、熾烈な価格競争へと移行し、疲弊する小売業が後を絶たなかった。また、品揃えが過度に標準化されたことで、売場の魅力も消えていった。

 これに対し、「新・流通革命」では、AIIoT技術を活用することで、「消費者が欲しいモノ」を「適正価格」で販売できるようになる。価格破壊型アプローチではない、新たな流通の在り方を提案するのが、SBGの「新・流通革命」であると『ダイヤモンド・チェーンストア』は考えている。

LINEとの経営統合で
流通革命の基盤が整う!

 11月中旬、Zホールディングスとメッセンジャーアプリ大手のLINE(東京都/出澤剛社長)が経営統合を発表した。

 LINEの親会社である韓国ポータルサイト大手のNAVERとソフトバンクが共同出資で新会社を設立。その新合弁会社がZホールディングスの筆頭株主となり、Zホールディングス傘下にヤフーとLINEがぶら下がる体制になる。

 これをSBGの流通戦略という観点からみると、今後経営統合を果たした場合、ソフトバンク陣営は、国内最大のメッセンジャーアプリというキラーコンテンツを新たにグループに取り入れることになる。LINEのユーザー数は約8000万人で、メッセンジャーアプリのほか、モバイル決済の「LINE Pay」、ECの「LINEショッピング」、スマホ投資サービスの「LINE証券」など、LINEアカウントに紐付いた多様な派生サービスを展開している。これらが「PayPay」「Yahoo!ショッピング」「PayPayモール」といったSBG傘下のサービス群と連携・統合していくと考えると、その効果は計り知れない。

 中でも注視されるのが、決済サービスの展開だ。今回の統合について、決済の専門家集団NCBLab.の代表を務める佐藤元則氏は、「ヤフーとLINEをあわせた巨大な顧客基盤に対してPayPayLINE Payが保有するアセットが統合された金融サービスが提供されれば、一気に日本のデファクトスタンダード(事実上の標準化された基準)になるだろう」と予想する。

 さらに佐藤氏は、経営統合が成立した場合、「(SBG陣営が)流通業界に革命を起こすための基盤固めは、これでほぼ揃ったといえる」とも話す。

 ZOZO、そしてLINEと、自社グループに足りないピースをM&Aや提携、経営統合で埋めていく、というSBGの流通戦略の流れは、もはや決定的なものとなったと言っていい。さらに言えば、この「足りないピース」の中に「リアル店舗」があれば、もしくは必要なフェーズになったら、SBGの莫大な資本力によって獲得に動くことになるだろう。

※『ダイヤモンド・チェーンストア』誌12月1日号特集から一部コンテンツ抜粋の上、加筆・再編集したものです