「株主は地球」環境負荷を最小限にするパタゴニアの「スロー」なビジネス戦略の神髄

2023/04/26 05:55
堀尾大悟
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米アウトドア企業のパタゴニア。創業時から地球環境保護とビジネスの両立に一貫して取り組んできた「環境先進企業」でも知られ、アパレル業界においてもサステナビリティが重要課題とされる昨今、その一挙手一投足はますます世界の注目を集めている。日本でも30年を超える歴史があり、根強いファンは多い。

2023年に創業50年の節目を迎えた同社は、昨今のサステナビリティのトレンドをどう見ているのか。そして、次の100年に向けた歩みをどう進めようとしているのか。日本でのセールスを統括するパタゴニア日本支社(神奈川県/マーティ・ポンフレー支社長)ナショナルセールス シニアディレクターの川上洋一郎氏に聞いた。

※アイキャッチ画像のクレジット:yasu matsumoto photography

5年ぶりの新店舗「パタゴニア軽井沢」

「パタゴニア軽井沢」に使われた木材
「パタゴニア軽井沢」に使われた木材 ©2023Patagonia,inc.

 2023年4月25日、パタゴニアの新店舗「パタゴニア軽井沢」がオープンした。軽井沢駅から徒歩1分の好立地で、クライミングや登山、トレイルランニング、フィッシングなどのテクニカルウエアから日常のライフスタイルウエア、アウトレット製品まで幅広いラインナップを揃え、観光客を含めた多様なニーズに応える。

 「22店舗のうち20店舗が都市部に、残り2店舗は千葉・一宮と長野・白馬のフィールドエリアにある。その中間の、非都市部で自然環境に恵まれていながら、都心からもアクセスのよいエリアでの店舗運営にチャレンジしたいと56年前から構想を温めていた」(川上氏)

 建物は100パーセント木造の平屋建てで、できる限り地元の長野県産の資材を使用。店舗の顔となるファサードの看板には、築80年以上の古民家から譲り受けた松の古木を利用するなど、環境負荷を限りなくゼロに近づける、パタゴニアならではのこだわりが随所にみられる。

 1989年に東京・目白に日本での1号店をオープンしてから、この「パタゴニア軽井沢」は23店舗目の直営店。2018年に広島に出店してから実に5年ぶりとなる。アパレルブランドとしてはかなりスローな出店ペースに思えるが、「ここに、実はパタゴニアの店舗づくりの姿勢が表れている」と川上氏は語る。

 「直営店舗の役割は単に製品を販売するのではなく、アウトドアスポーツを愛する人びととともに環境保護へのメッセージを発信したり、そのメッセージに共感するさまざまな人が集う地域コミュニティのハブとなること。そのために立地は時間をかけて検討し、地元自治体や環境活動団体などとも対話を重ねている」

 私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む――パタゴニアはミッションステートメントにおいて、ビジネスを目的ではなく、地球を環境危機から守るための手段と明確に位置づけている。新規出店に際しても、そのミッションを達成するのにふさわしい場所であるかどうか、時間をかけて吟味しているのだ。

 軽井沢はアウトドアコミュニティに加えて、農業や林業に従事するコミュニティとともに環境課題に取り組める素地があることも、出店への大きなポイントになった。
パタゴニア軽井沢内観 
パタゴニア軽井沢内観 yasu matsumoto photography

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