並松誠社長が語る、高質スーパー阪急オアシスが”標準化”を進める理由
2割は店独自の品揃え
──高利益体質への転換を図るため、どのような施策を講じますか。
並松 高齢化の進行や働く女性の社会進出、また単身世帯の増加などを背景に、伸長している総菜を充実します。とくに近年、生鮮素材を加工した総菜が好調です。鮮魚部門の生ネタを使った「魚屋の鮨」、精肉部門の素材を加工した牛肉弁当やコロッケといった商品のラインアップも増やします。
ただ総菜商品の加工には多くの人時を必要とします。人材確保も難しい時代のため、同じエイチ・ツー・オー食品グループ(大阪府)で、弁当や総菜の製造を手掛ける阪急デリカアイと連携し、キット化したものを仕入れて、店内で仕上げるなど効率的な部門運営も工夫する考えです。
──各店の品揃えの方針について教えてください。
並松 取り扱いSKUを絞りながら、全体の品揃えの80%は全店共通、残り20%は店独自の品揃えを行います。マーケットの特性は店が一番よく知っており、その意見を参考に商品部が需要のあると思われる商品を決め、店はそこから自店に合うものを選び、独自の品揃えを行います。また全店共通の80%のうち20%は、ナショナルブランド以外の商品、たとえばローカルブランドなども扱うことで、競合店との差別化を図ります。
──価格や販促の施策についてはどう考えていますか。
並松 購買頻度の高い商品は地域の水準に合わせた価格で提供しますが、必要以上の安売りはしません。その方針のもと、従来、月間6回実施していた5倍ポイントデーを4回に減らしました。販促は、売場変更にかかる人時が極端に増えるため、今後はエブリデー・ロープライス(EDLP)比率を高めていきます。
──仕入れ担当者の仕事も大きく変化しそうですね。
並松 チラシに時間をかけるのではなく、バイヤーにとって本来もっとも重要な業務である独自商材の開拓に力を入れるよう指導しています。関西では流通していない魅力的な商品は、探せば各地にたくさんあります。また生鮮食品でも、中部から九州までの範囲なら、産地から商品を陸送することもできます。最近では、中部エリアでその日の朝に収穫されたレタスを販売したところ、お客さまから好評をいただいています。このように販促策や安売りで集客するのではなく、各店で異なるニーズに応えながら、付加価値の高い商品を販売することでお客さまの満足度を上げ、利益を確保できる手法を磨いていきます。
各店の業務標準化を推進
──出店戦略について教えてください。
並松 新規出店は慎重に検討します。よい立地はすでにどこかの企業が押さえている場合が多く、むやみに店数は増やしません。基本はスクラップ&ビルドで、たとえば3店を新規出店する場合、業績の悪い3店を閉めるといった考え方で店舗網を強化します。スクラップする店舗に在籍していた優秀なパートタイマーを、新しい店で積極登用するなど、人材もうまく活用していきます。
──現状、店舗政策における課題は何だと認識していますか。
並松 当社は、複数の食品スーパー(SM)企業が集まってできた歴史があり、店舗規模が多様である点です。とくに売場面積200坪強、売上高が10億円に満たない小規模のSMが、全体の約3割を占めています。これに対し、今後はアウトパックも大いに活用しながら、効率的な運営を進めます。
また各店での作業や運営についても、標準化、また平準化をキーワードとする取り組みにより生産性向上を図ります。実現のため、新たに業務標準化推進部という部署を新設しました。店舗を北摂、大阪、千里、神戸、東部の5エリアに分け、それぞれで業務の標準化を推進、従業員の働き方のクオリティも上げていきます。
──最新店は今年5月にオープンした「阪急オアシス福島ふくまる通り57店」(大阪市)。購入した総菜、食材を、店内のイートインコーナーで飲食できるユニークな店づくりが話題です。
並松 JR西日本大阪環状線「福島」駅周辺は、話題の飲食店が多い環境にあり、当社SMもそれに合わせたスタイルで店を出しました。おかげさまでオープン後、多くのお客さまに利用いただき盛況です。ただSM本来の機能である、食材の提供という面ではまだ課題は多いと感じています。とくに午前中の集客はまだ不十分であり、まずはSMの認知度を上げる努力をしていきます。
──独自の品揃え、生産性向上などの施策により、今後、阪急オアシスのビジネス、店舗網は大きく変化しそうです。
並松 今回説明した施策のほか、現在、売場面積300坪、450坪、600坪の規模別で、標準的な品揃えを行うプロトタイプの構築にも力を入れています。今年3月には、「都市型300坪タイプ」として「阪急オアシス新町店」(大阪市)を出店しました。今後、他のタイプについても順次出店、既存店へ波及、競争力ある店舗網の再構築を進めます。
まだ課題は山積していますが、地道な取り組みにより、中計の最終年度となる22年3月期の目標である営業利益率2%を達成したいと思います。