ウエルシアHDとイオン九州が合弁会社設立 フード&ドラッグの新業態展開へ
「このままでは生きていけない」――あえて合弁会社を立ち上げた理由
熊本麻生田店が成功モデルになったとはいえ、単純にフード&ドラッグを志向するのであれば、ウエルシアHDの店舗にイオン九州のコンセが入る”麻生田スタイル”を増やしていけばいいはずだ。
これについてイオン九州の柴田社長は「2社でやっていると、いろいろと”調整”が必要になる」と説明。同じイオン系とはいえ、コンセ出店のかたちをとる以上、売上の立て方やMD(商品政策)、運営手法など2社の考えや主張をすり合わせる作業が必要になり、そのプロセスに時間を要することになるのだろう。であれば、合弁企業としてイオンウエルシア九州を立ち上げ、同社の経営戦略のもと店舗開発、売場づくりを進めたほうが吉、と見たのかもしれない。
それに加えて、イオン九州の柴田社長とウエルシアHDの松本社長が会見で口を揃えて言及したのが、「このままではSM/DgSは生きていけない、変わらなければならない」という危機感である。コロナ禍も経て社会、経営環境がよりいっそう変化していくなかで、「SM」「DgS」という既存の業態論で議論していてよいのか――。そうした問題意識も、イオンウエルシア九州の設立の背景にはあるのかもしれない。
2030年までに「最低でも200店舗、売上高1800億円」
イオンウエルシア九州は今後、まずは福岡県内で新業態の出店を進める計画。ブランド(屋号)名は商標登録の確認などもありまだ決まっていないが、すでに何案かに絞り込まれているようだ。ただ、「『ウエルシア』になる可能性もある」(イオン九州柴田社長)という。
売場面積は熊本麻生田店よりもやや大きな450坪程度を想定するが、場所によっては300坪規模になるケースも見込まれるという。取り扱いSKU数は2万7000程度の規模になるようだ。
何より新業態1号店の出店が待たれるが、今回の会見では具体的な時期・場所は公表されなかった。以降の出店については、イオン九州の既存店の業態転換も含め出店スピードを加速。イオン九州の柴田社長は「2030年までに最低でも200店舗、(イオンウエルシア九州の)売上高1800億円はめざしたい」と息巻く。
イオンウエルシア九州は激戦地・九州で今後どれだけの存在感を示すことができるか。そしてSMやDgS、ディスカウントストアなど競合他社の経営戦略に何らかの変化を迫ることになるのか。いずれにしても、同社の”誕生”は局地的な出来事ではなく、日本の小売業界全体に影響を及ぼし得るといっても過言ではないだろう。