連載・GMS復活宣言 #1「総合」にこだわるイオンリテールのゆくえ

下田 健司
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最重要課題であるGMS改革の成果は…

 イオンはかねてGMS改革を最重要課題の一つとして取り組んできた。

 GMSは1980年前後に変調が表れ始め、停滞が長期化する。イオンは2000年頃から、衣料品専門店に対抗し低価格戦略を打ち出すほか、GMSを核店舗とした大型SC(ショッピングセンター)の積極出店、旧態依然とした箱型GMSからの転換を図った。一方で、ビジネス構造を変えようと、商品、物流、ITなどの改革にも取り組んでいった。

 2010年には、企画・製造・販売を手がける新会社トップバリュコレクション(千葉県/三浦隆司社長)を設立し、SPA(製造小売)による新ブランド「トップバリュコレクション」を立ち上げ、衣料品のテコ入れに乗り出した。

 18年には、衣料・住関連で「インナーカジュアル」「キッズリパブリック」「グラムビューティーク」「ホームコーディ」の4事業を商販一体の専門会社化する方向を打ち出す。しかし、この専門会社化はほどなくして頓挫した。GMSの既存組織と相容れず運営上の課題が大きかったからだ。

 一連の改革にもかかわらず、収益は不安定なままだった。過去10年間のイオンリテールの営業利益を見ると、11年度には400億円を超えていたが、14年度になると25億円に落ち込む。その後、いったんは100億円台にまで回復したが、再び収益は悪化している。

 イオンの稼ぎ頭はディベロッパー事業と総合金融事業だ。この2事業で連結営業利益の約6割を占める。これはGMSを核店舗にしたSCのビジネスモデルから生まれるところが大きい。GMSは儲けこそ小さいものの、イオンのSCの集客装置として欠かせないものになっているし、ディベロッパー事業や総合金融事業の利益創出に密接に結びついている。それだけに、グループにとってGMSの収益力回復が持つ意味は大きい。

デジタルシフトでも「総合」を追求

 近年、生活全般にデジタルが浸透し、EC(ネット通販)も拡大するなか、イオンは中期経営計画の柱の一つにデジタルシフトを掲げデジタル施策に取り組んできた。

 イオンリテールのオンラインサイトは、衣料・住居余暇を扱うイオンスタイルオンライン、食品中心のイオンネットスーパー、ギフトや名産品を販売するイオンショップなどがある。これに加え、23年には英オカド(Ocado)との提携による次世代ネットスーパー事業を開始する。

 千葉市緑区誉田町に開設する物流施設ではオカドのAIやロボティクスの技術を活用し24時間稼働で効率的なピックアップを行うなど大量受注に応えられる態勢を整え、30年までに6000億円の売上をめざすとしている。26年には東京都八王子市に2カ所目の物流拠点を開設する計画だ。既存の店舗発送型のネットスーパーと次世代ネットスーパーでは、食品を中心にしながら、衣料品、住関連品などにも品揃えを拡張し総合化を図るとしている。

 イオンは、グループのデジタル売上を19年度の700億円から、25年度に1兆円に引き上げる。過大とも言える数字はオンライン売上比率10%程度の想定によるものだ。

 GMSは業態としての役割を終えたという指摘もあるが、イオンリテールは「総合」の看板を下ろす考えはない。むしろ、コロナ禍において、ワンストップで衣食住の買い物ができる利便性が消費者に見直された強調する。店舗でもデジタルでも総合にこだわる同社はGMSをどう変えるのか。新しい「総合」の姿を生み出す力が問われている。

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