“博打経営”から抜け出すための、アパレルビジネス3つの企業価値向上策とは
②コストは、固定費(販管費)と変動費(商社・工場)にわけて考えよ
先日、大手アパレルCEOと食事をした時のこと。彼は、「売上高販管費比率が40%台でなければ利益はでない」といっていた。確かに、私が分析した結果、世界のSPAアパレルの売上高販管費費率は40%台で、日本のほとんどのアパレルは50%台である。余談ながら、ユニクロは30%であり、日本の一般企業と比較して20ポイント以上の差を付けており、このコスト構造を変えなければ、ビジネスに勝てるはずもない。
また、販管費のもっとも大きな割合を占めているのは、地代・家賃である。地代・家賃を下げるため、一つひとつ交渉するなどというのは現実的ではない。例えば、百貨店でいえば国内に190店もあり、さらに、プロパー、セール、最低保証など、極めて複雑なルールがあり、また、そのルールもコロコロ変わる。私は過去、これらをマスターデータ化しようと試みたが、全く無駄だった。
では、販管費を下げるための、地代・家賃を下げる方法は何か。
それは、EC化率を上げることだ。しかも、自社ECでなければならないことは、説明は不要だろう。
他社ECであれば、百貨店がZOZOに変わっただけで、30%も取られれば何のコスト削減にもならない。ECプラットフォーマーは、売上の20-30%のマージンをアパレルからもらい、また、顧客の動態的買い回りデータ収集も全て自社化している。成熟経済下では、顧客を囲い込むことが重要で、LTV(顧客生涯価値)を上げることが重要なのだ。
それでは、EC化率を上げるためにはどうすべきか。
多くの人が、「それはO2Oだ」と思い違いをしているようだが、
ライブコマースに関しては、改めていずれ紙面を割いて説明するが、簡単に説明したい。GAFAMと呼ばれる一階層プラットフォーマーの上に、例えば、ユニクロのようなベーシック衣料、ユニフォーム、スポーツ衣料などのプラットフォーム、または、マッシュや東京ベースなど、今、日本のファッションを牽引しているファッションプラットフォームをおく。そして、それらは、価格によって松竹梅にわかれて、二階層プラットフォームをつくるのだ。これが、私のいうデジタルSPA戦略である。
例えば、今、売上絶好超のマッシュスタイルホールディングスの基幹ブランド「Snidel」は、全国に30店舗程度しかない。ユナイテッドアローズも30店舗程度だ。
今、日本の店舗の30%は赤字といわれており、これら赤字店は早急に閉鎖。売上を落とさず、
バーチャル店舗での着替えは、AR (拡張現実)をつかって、自分のスタイルにフィットする洋服を組み合わせる。今、AppleのiPhoneには「メジャー」というアプリがはいっており、ARで十分着替えを楽しむことが可能だ。つまり、VRで世界観を醸成し、ARで服を買う。このような流れで、仮想現実を使うを使うことが、最も自然だ。こうすれば、30店舗程度のブランド群でも売上1000億円を超える企業体ができあがり、コストは劇的に下がる。
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