“博打経営”から抜け出すための、アパレルビジネス3つの企業価値向上策とは
③商社と工場をこれ以上いじめてもなんのメリットもない
今商社は、繊維、アパレル事業からの撤退を進めている。アパレル企業はよく考えてもらいたい。商社を外すのは賛成だが、もし商社がいなくなったとき、あなたたちは単独で事業ができるのか、アパレル連合をつくることができるのか、ということだ。
私は、商社には流通から出て行ってもらい、むしろ、アパレルの直貿化を助けてもらう。また、商社は、PLMのクラウドオーナーになってもらい、数千、数万の素材、縫製工場、企画工場を結合する「デジタルハブ」になってもらい、極度にフラグメントした産業構造を効率よくまとめ上げてもらいたい。いわゆる、私が封印した「デジタルSPA」の実践だ。
私は、昨年の冬、経済産業省に幾度もよばれ、この「デジタルSPA」について概念を説明した。彼らは、「予算がない」といって私を外し、「あとは自分でやる」と言うがどうなるだろうか。
この「デジタルSPA」は、自動車産業やパソコン産業など、アセンブリ産業に造形の深い人間であれば、一発でピンとくる。ドイツでは、フォルクスワーゲンが、PLMを活用し、数万という部品メーカの組み立てを最適化している。いわゆる「インダストリ4.0」だ。今、バングラデッシュの次を探しているバブル世代の管理職にはどいてもらうしかない。もはや、そのような競争をする状態ではないのだ。
多くのバブル世代管理職は、バリューチェーンを“リニア”(一直線)にとらえ、「コストを上から叩けば、ドミノ倒しのように下がる」という発想しか持っていない。彼らは、アパレルビジネスの金の流れや事業構造を全く理解していないのだ。もし理解できないなら、理解できるコンサルタントを使うべきだ。米国では、コンサルタントの活用が企業の競争優位を決め、6月7日の日経新聞では、もはや産業政策までも国は「コンサル頼み」になっていると報じている。コンサルを使うことはもはや恥ではない。常識なのだ。例えば、100億円のブランドがPLM導入から得られる単体の経済メリットは、わずか1500万円程度だ(下図参照)。しかし、工場、商社、アパレル、小売といった、
おそらく、これが最後のチャンスだろう。これまで紹介した中国シーインやH&Mなどの戦略は、過去の私の論考を読んでいただきたいが、このままの日本企業のあり方では、勝算はないことはあきらかだ。次週以降、デジタルD2C、企業買収、中国市場進出など、経営の新しいアジェンダについて論じたい。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
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