歯止めがかからない!円安による原料高に対応する3つの方法

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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原価高を克服する方法

djedzura/istock
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このように、止まらぬ原材料の高騰と円安による輸入の高値買いがダブルショックとなり、すでにコスト削減は限界まできており、これ以上コストを引き下げることは、商品品質がますます悪化し、競争力を削ぐ段階にまできているアパレルのビジネスモデルを構造的に理解していない人は、原材料が上がれば売価が上がると考えているようだが、それは間違いだ。ましてや、近視眼的に原価ばかりみていると、販管費の「家賃」がすでに赤字の温床になっていることも気付かなくなるわけだ。

アパレルが、「仕入れすぎ」を辞め、そもそも「売れる力」を超える量の商品を持たないこと。そして、仕入れた商品は、可能な限り定価で販売すれば、理論上、原価高の30%を吸収することが可能なのだ。解説しよう。

アパレルは、企画段階で「企画原価率」というものを設定する。これは、上代が正規価格で売れた場合の原価率であり、いわゆる損益計算書の原価ではない。この企画原価率を仕入れた商品すべてが売ることができれば、企画原価率の逆数が粗利率になるため、百貨店向けアパレルの粗利は80%を超え、ショッピングセンター向けアパレルの粗利も70%台となる。しかし、これに値引きと(上場企業であれば)余剰在庫のライトオフ(損金処理、あるいは、評価減)が加わり、損益計算書の原価は上がるのだ。逆に言えば、値引きをせず、そして、仕入れた商品を売り切ることができれば、あるいは、ライトオフ対象にしなければ、アパレルの原価高を吸収する貯金は20%から30%もあるのだ。つまり、MDの考え方を全く変える必要があるわけだ。以下、私の提言を記載しよう。

 方法1 商社としっかり取り組み資金の滞留期間を短くする
(キャッシュコンバージョンサイクルを短くする)

今、売れに売れているアパレルの消化率はプロパーで80%を超えている。しかし、多くのアパレルは、頑張っても50%程度だ。ただ、残りの50%の商品価値は、本当にワンシーズンなのか考えてもらいたい。実際、アパレルのMDの中で売れている商品はベーシック衣料に近しいものだろう。アパレル企業の方は、「奥」(在庫) と、品数を混同せず、冷静に分析して頂きたい。

ならば、本当に、それらのライトオフの期間は「ワンシーズン」なのか、3年なのか5年なのかよく見るべきだ。自動的に「ワンシーズン商材はゼロ評価」というのは、古い発想だ。アイテム毎に評価期間を細かく変え、例えば、デニムやブラウス、アンダーウエアのようなものは数年持つべきだし、バッグやアクセサリであれば5年以上は持つべきで、新規仕入は可能な限り少なくしFIFO (First in-first out 先入れ先出し)のルールで販売する商品群を定義する。また、それらの滞留期間の資金は商社に持ってもらい、商社ファイナンスを使うことをお勧めし、支払う口銭に金利を組み込む。直貿で途上国でファイナンスをやるなど、金利差を考えれば正気の沙汰ではない。

原価高を克服する方法はあと2つある。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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