売らない店「b8ta」3号店 五感に訴えかける、日本独自の売場の特徴とは

取材・文:大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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b8ta Tokyo-Shibuyaの店内
本国・米国にもない試みとして食品カテゴリーを拡充するとともに、カフェスペース(写真奥)を導入した

 まず、新たにカフェスペースを設置するとともに、食品カテゴリーの商品を充実させた。試食・試飲を含めて五感に訴える体験を提供するのがねらいで、これは本国・米国の「b8ta」にもない取り組みだ。常時9品目、イベント時には計14品目の食品カテゴリーの商品を扱う。取材時はヴィーガン向けの餃子や、希少性の高いホップを使ったこだわりのビール、プロテインバーなど、新機軸のユニークな商品が並んでいた。

 また渋谷店では、商品陳列什器を可動式にして、店内のレイアウトを柔軟に変更できるようにしているのも特徴だ。これにより、スペースを有効活用してイベントも開催できるようにするほか、大型の商品展示も可能にしている。

「メディア」としての店舗価値を高める

 もう1つ特筆したい点が、独自のスマホアプリを活用したデータ取得にも挑戦している点だ。渋谷店ではすべての商品にQRコードを設置。来店客がこれを自身のスマホで読み取ると、商品情報がアプリ上に記録され、帰宅後などどこでも再び閲覧できるようにした。1・2号店では基本的に商品に併設したタブレット端末で商品情報を見る方式だったが、アプリ導入で自身の端末で閲覧可能にすることで、商品の公式サイトや、購入サイトへの誘導を容易にしている。

 アプリにはアンケート機能も搭載した。回答してスタンプをためると店内で利用可能なクーポンがもらえる特典を用意し、アプリのダウンロードを促す。出品企業はこのアンケート内容をカスタマイズできるため、より需要に沿った消費者データを収集できる。

 同じくデータ取得の点では、産業機器メーカーのデンソーウェーブ(愛知県)との協働により、店舗の出入口外側にもカメラを設置。同社の人流データ計測技術を活用して、店舗前半径15m圏内の人の流れを測定し、店内のデータと組み合わせることで、出品企業のマーケティングための新たな提案につなげていきたいという。ベータ・ジャパンの北川卓司CEOは「『どのような人が、どれくらい店の前で立ち止まり、入店したか』といった行動もデータ化し、商品を宣伝するメディアとしての店舗価値も高めていきたい」と語っている。

 渋谷店の来店客目標は明確には掲げていないが、北川CEOは「月間1万人以上の来店は見込める」と話す。今後は東京都以外の都市部に出店する計画もすでにあるそうで、リアル店舗の可能性を追求する最先端事例として注目が集まる。

会社概要

店舗名 b8ta Tokyo-Shibuya
所在地 東京都渋谷区渋谷1-14-11 小林ビル1階
売場面積 約243㎡(共有部含む)
営業時間 11:00~19:30
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取材・文

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。

最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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