第81回【ケンコーコム】処方箋薬の新サービス「ヨヤクスリ」のサービス開始後の状況と今後の展開

2014/05/19 09:00
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 健康食品や医薬品などをインターネットで販売するケンコーコム(福岡県福岡市、後藤玄利代表取締役)が、2014年2月5日から開始した、処方箋画像送信サービス「ヨヤクスリ」は、注目を集めて3ヵ月ほど経過した。

 

「ヨヤクスリ」は、薬局検索とスマートフォンなどで撮影した処方箋画像を、希望する薬局にFAX送信できる、無料のサービスである。ITを活用し、健康に関することは何でも解決できる環境づくりをテーマに取り組む企業として、処方箋薬が必要な人のニーズや利便性を追求したサービスとして開始。生活者のニーズが高かった薬局での待ち時間の短縮に貢献しているという。

 

 病院で処方された薬を薬局で順番待ちして受け取ることは、具合の悪い患者さんや小さな子ども連れの母親などにとっては、辛いときがある。また、毎回、同じ薬を処方されている患者にとっても、調剤の順番待ちは、無駄を感じることが多い。「ヨヤクスリ」を利用し、事前に処方箋を薬局に送信することで、薬局での順番待ちを短縮することが可能になる。

 

 同様に、受け取りの利便性を向上させるのが、薬局の検索機能だ。自宅や職場など、それぞれのライフスタイルや生活動線に合わせて希望の薬局を検索することができる。基本的に調剤薬局は、病院のすぐそばに立地する“門前タイプ”がほとんどだが、最近では、調剤併設のドラッグストア(DgS)なども増えている。職場の近くの病院で診察を受け、調剤薬は仕事帰りに自宅近くの調剤薬局などで受け取る。このように、時間の短縮と、いちばん使いやすい場所での調剤受け取りが可能となることで、注目度の高いサービスとなっている。

 

 しかし、本サービスの開始にあたっては、薬局情報のリスト化や患者によるレビュー機能、個人情報の取り扱いにおいて懸念され、一部で波紋を呼んでいる。5月をめどに、全国展開を計画している「ヨヤクスリ」の処方箋薬サービスは、関東地区で先行展開が行われている。そのため、東京と神奈川の薬剤師会から疑義照会文が送付されている。これらに関して、ケンコーコムのヨヤクスリ事業部長である倉重達一郎氏は、「真摯に対応させていただき、改善・改良できるところは、対応している」という。

 

 同社は、プライバシーマーク取得企業であり、コンプライアンス順守の仕組みも持っていることから、個人情報の取り扱いには、十分な配慮が行われている点や、検索用の薬局情報は、オープンデータを基にしている点、処方箋サービスへの対応を行わない薬局の場合は、連絡があれば、非対応として掲載するというような対応が行われている。また、生活者が利用した薬局についてクチコミするレビュー機能についても、同社の通販サイトのノウハウに基づいた不正防止や監視の運営ポリシーおよびガイドラインを徹底して採用。さらに、承認制を取り入れることで、不当な不利益防止策を立てている。

 

 また今後、全国展開とともに、生活者と薬局を結ぶ有人の「ヨヤクスリ」専用のコールセンターの設置や、「電子お薬手帳」の導入など、さらにサービスの充実を図っていくという。

 

 生活者にとっての利便性を追求しながら、薬局での効率化も促進できるシステムとして、さらに利用価値を高めるために、「消費者と薬局の要望を取り入れながら、より使いやすいシステムをめざして、改善とともにコンテンツの強化を図っている」(倉重氏)という。

 

 現在、約1万件の処方箋FAX送信可能薬局から、全国展開とともに、薬局情報が掲載されている約5万件への対応というサービス拡充を行っている。「地域のかかりつけ健康ステーション」を掲げている調剤併設のDgSなどにも、サービスツールとして、顧客獲得のツールとして、活用できるものになるかもしれない。

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