上杉隆さんを応援する(後編)

2010/05/28 00:00
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 上杉隆さんは、1968年生まれ。

 NHK報道局、鳩山邦夫代議士の公設秘書、ニューヨークタイムズ東京支局を経て、2002年からフリーランスのジャーナリストとして活動を開始する。

 メディアに出演する際には、小泉純一郎元首相や安倍晋三元首相などのモノマネに興じ、とらえどころのないおどけた姿と落ち着きのなさがほほえましい存在――。

 

 だが、ひとたびペンを握らせれば、切れ味は抜群。安倍政権の退陣までの真相を追った『官邸崩壊』(新潮社)や記者クラブ制度を批判した『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)はベストセラーにもなった。

 ちなみに、ダイヤモンド社のビジネス情報サイト「ダイヤモンド オンライン」では『週刊 上杉隆』を連載しているので、ぜひ、ごらんください。

 http://diamond.jp/category/s-uesugi

 

 そして、現在は、『週刊ポスト』誌上で、税金で賄われている官房機密費とメディア間の“収賄問題”にたった1人で斬り込んでいる。政府の官房機密費が、評論家やコメンテーター、新聞の論説・解説委員、記者クラブの記者にまで流れていたという問題だ。

 どんな大手メディアも不偏不党とうたっているはずなのだが、カネをもらうことで政府の不正追及の筆鋒は鈍る。

 しかも、カネをもらった人間がメディアのトップに居座っているとなれば、健全なジャーナリズムを維持することはできない。それが証拠に、野中広務元官房長官が「政治評論家やジャーナリストにも(官房機密費を)渡していた。断られたのは田原総一朗氏だけ」と暴露しているのもかかわらず、大手新聞をはじめとするメディアは、この問題について大きくは取り上げていない。その様は、自分に降りかかる火の粉を恐れているようにしか見えない。

 

 新聞やテレビの凋落の原因は、不景気や若者の活字離れだけにあるのではなく、政府の言論統制下におかれ、権力に盲従してしまっているメディアの気概のなさにあるような気さえしてくる。

 

 上杉さんは、周囲との折り合いがついていないという意味では奇人変人である。だが、その周囲が不正の横行を許す世界だとするなら、間違いを正していくのが本来のジャーナリストの仕事だろう。

 

 誠に申し訳ないことに、いまのところ何もできないが、この問題については、上杉さんを応援したい。

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