「急拡大」後も参入続々 ネットスーパーのさらなる成長に向けた正しい打ち手とは?
「ウォレットシェア」をどう高めるか
市場は拡大が見込まれ、需要を取り込む体制も整った──各社のネットスーパーもこれから右肩上がりの成長を続けていくかというと、必ずしもそういうわけでもなさそうだ。
本特集で実施している消費者調査で興味深いデータが得られている。図表はふだん使いの生活必需品の購入先で、年代別の「実店舗しか利用しない」という人の割合を21年12月と23年12月で比較したものだ。ここで注目したいのが、20代の「実店舗しか利用しない割合」が、2年間で8.9ポイント(pt)も減少した一方で、50代が12.7pt増加しているという点だ。
つまり、コロナ禍でネットスーパーにシフトした消費者のうち、50代では多くがリアル店舗に回帰していると読み取れる。この年代はコロナ禍中、“緊急避難的”にネットスーパーを利用しており、収束後はリアル店舗に戻ったということだろう。消費者調査では、物価高を背景に「見切り品を購入するため、より安い商品を探すため、店舗に足を運ぶようになった」とのコメントも散見され、ネットスーパーからリアル店舗に回帰する動きが存在するのも事実だ。
一方、30代はコロナの前後で変わらずネットスーパーを利用し続けており、20代に至っては、コロナ禍でネットスーパーを経験した利用者の多くがその後も継続して使っていると考えられる。
20代、30代は今後、食品小売の主たる客層になる年代であり、「Uber Eats」のようなフードデリバリーの利用率も高く、宅配サービスに利用料(送料)がかかることに抵抗がない顧客層でもある。ネットスーパーのビジネス展開を考えると、今後は20代を含めた比較的若い世代をどう取り込んでいくかがポイントとなりそうだ。ただ、こうした若い世代に強くリーチできているのは「Amazon」「楽天」といった巨大プラットフォーマーでもある。ネットスーパーの成長をめざす中では、プラットフォーマーとの競争も念頭に置く必要があるだろう。
ネットスーパーのビジネスを拡大していくうえでは、顧客の新規開拓に加えて、すでにネットスーパーを利用している既存の顧客を深掘りしていくことも重要だ。
市場が拡大傾向にあるとはいえ、経済産業省の調査によれば、食品のEC化率は4.16%にとどまっている。ネットスーパーの利用客の多くは実店舗とネットスーパーを併用していることも本特集の調査で明らかになっている。Green Beansの運営会社、イオンネクスト(千葉県/バラット・ルパーニ社長)の取締役副社長の太田正道氏は、「ネットスーパーをはじめとした食品ECは、まだお客さまのメーンのチャネルになりきれていない」とし、ネットスーパーには大きな成長の余地があると指摘する。
注文1回当たりの購入金額、いわゆるバスケット単価か、月間あるいは年間の利用率(購買頻度)か、継続率(リピート率)か。消費者のウォレットのシェアをネットスーパーでどう獲得していくかというのも事業成長のテーマになりそうだ。
本特集では、「急拡大期」の後もネットスーパーの成長をめざす有力企業を取材している。この先、ネットスーパーの覇権を握るのはどのチェーンか。各社の戦略を読み解けば、その姿が浮かび上がってくるはずだ。
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