「Shoptalk2023」最新報告と小売業ロイヤルカスタマー戦略

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「Shoptalk2023」最新報告と小売業ロイヤルカスタマー戦略

射場 瞬 氏

株式会社IBAカンパニー 代表取締役社長
DCMホールディングス株式会社
社外取締役監査等委員
射場 瞬 氏


奥谷 孝司 氏

株式会社顧客時間 共同CEO取締役
オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員COCO
Lazuli株式会社 マーケティングアドバイザー
奥谷 孝司 氏


萩原 静厳 氏

Lazuli株式会社 CEO兼CTO
萩原 静厳 氏


小平田 康寛

株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア
流通マーケティング局部長
デジタルマーケティング戦略室室長
小平田 康寛 氏


 

2023年に米国ではラスベガス、欧州ではスペインのバルセロナで開催された「Shoptalk」では、小売業界向けの最新のテクノロジーや消費者動向に関するトピックが取り上げられ、小売業関係者の間で情報交換がなされました。「Shoptalk」で紹介された最新動向とともに、プロダクトデータ活用による小売業のロイヤルカスタマー戦略についてディスカッションしていただいきました。

オンライン/オフラインで顧客データ統合が潮流

小平田 2023年3月に米ラスベガスで、5月にはスペイン・バルセロナで開催された「Shoptalk2023」では小売業界向けの最新テクノロジーや消費者動向が語られた。テーマとしては、①Best in class shopper engagement(最高クラスの顧客エンゲージメント)②Emerging channels (新しいチャネル)③Outstanding store experiences(卓越した店舗体験) ④Tech investments for efficiency (効率化に役立つ技術投資)⑤Evolving organization(進化する組織)が掲げられていた。

奥谷 一貫してあるのはオムニチャネルが前提で、その上でノーモア・オムニチャネルだと。ジャスト・ユニファイド・コマースということでオンとオフがつながっているのは当たり前。その中でどんな優れた顧客体験を提供するか、どうやってお客さまのプロアクティブなデータを取得するのか、購買以外のデータをどのように取るかというような話を一生懸命やっている。それを突き詰めるとひとつのIDでお客さまを把握し、従業員をデジタル武装するか、当然、商品情報、顧客の追跡情報などたくさんの情報がお客さまはもちろん、店舗スタッフにもスマホで見られるようにすることが重要と話していた。

射場 店舗での顧客体験を向上させることが、なぜ今重要視されているのか?コロナ禍においては、感染を避けるため、オンラインの利用が増え、お店への客足が減っていた。それが今、より“便利への期待度”が高い消費者として店に戻ってきた。コロナ禍の間にデジタルサービスを使い、消費者がデジタルの便利さに慣れ、便利さへの要求が高くなった。“すばらしい体験”と感じてもらうハードルが高くなった分、顧客の買い物体験を自然に便利なものとするため、データやオペレーションをつなげることが重要だと感じた。

小平田 お客さまがレベルアップというか、わがままになった。わざわざ店舗に足を運んだのに新しい体験がなければ、だったら家で買うと思うようになる。

射場 店舗に戻ってきたといえ、戻ってきたお客さまが同じだとは思わない(より便利さへの期待値が高い)と意識することが大事だという言い方をしていた。それと同時にセッションの中で言われていたのは、ECでの購買が増えたといっても、受け取りは店舗でのピックアップを指定している場合が多いそうだ。例えば、米国でも大手百貨店であればECでの購買の3分の2くらいは店舗ピックアップを指定している。ECでオーダーしても店舗に来てくださるお客さまたちのニーズや行動を理解し、その体験を向上させるにはどうしたらよいか。オンラインと店舗での行動を、データも統合して、顧客理解を深めることが必要になるのだと思う。

萩原 バルセロナで注目したのが、百貨店のプランタンがオフラインとオンラインをどうつなげるのかという話。オンラインで接した人に対して、オフラインでもどうやってよい体験をしてもらうかといったところをドラスティックに変える。そのために企業のコンセプトや文化も変える。DXの取り組み指針を会社の文化にプラスアルファしているシーンがあってそれが印象的だった。


プランタンの取り組み

射場 顧客体験が“シームレスにつながっている”ことが重要と言われていた。“体験をつなげる”ためには、チャネルを超えて、行動や購買をトラッキングできるようにデータをつなげなければならないし、組織も横断的に皆でお客さまにどういう体験を届けたいのか考えなければならない。プランタンのCEOのセッションでも、顧客体験を総合的に考え、顧客の受けるブランドイメージも含め、顧客体験を会社全体で変えていこうとしているという話が聞けた。これは、正しい進化の方向性だとと感じた。

萩原 一番面白いと感じたのは、リテールの重点ポイントがエンターテインメントからコンビニエンスに移っていくことがとても大事で、背景として消費者サイドがデジタルの当たり前が変わってきたことを指摘していた。そのコンビニエンスの要素がコンティニアス、情報の一貫性、オンラインでもオフラインでもちゃんと同じスタンスでとか、情報に一貫性を持たせるという話とか、あとはフリクションレス。そこにデータが必要だとか、プロダクトインフォメーションがちゃんとあることだと話していたのが凄く印象的だった。
 従業員のエンゲージメントについては、世界的に働き手が少なくなっている状況において、いかに従業員を支援していくのかという話の中で、情報が大事だと。ショッパーの行動履歴や購買履歴を従業員がデータで把握した上で、おもてなしをするという話が出ていた。さらに、在庫情報やバックエンドの情報、商品情報に至るまで、顧客理解に関わるデータを整備と情報流通の重要性がさらに増してくると思う。
 その次はChanging Relationshipの部分で、お客さまとの関係性に加えてブランドや競合との関係性、米でウォルマートがプラットフォームを他のリテーラーに提供している話。やはりAmazonが来てウォルマートがECプラットフォーム出して、米国のリテーラーのリレーションシップで、「右手で握手して左手は…」みたいな関係性が、この先日本にも来るかもしれないというヒリヒリ感がデジタル化を加速させていると思った。

データの取捨選択が重要。8割のデータは捨てても良い?

小平田 欧州は解像度を上げてお客さまを理解して、ブランドへのこだわりというのが間違いなく米国よりも強い。

萩原 どうやってデータを活用するのか、顧客理解やエンゲージメントのためにプロダクト情報をどうやって使うのかという話を聞いて、われわれとしてもすごくビジネスチャンスはあるなと感じた。それが日本でも話題になっていくと思うので、われわれのプロダクト、データプラットフォームの価値とか意義があると強く思っている。それをカスタマイズするのにAIは重要だと思っていて、そこの強化を進めている。

奥谷 総論としてECというものが電子商取引ではなくて、エンゲージメントコマースという意味で、つながりの商売に変化している。Lazuliが面白いと思うのは、この商品は何々ですという情報はGoogleにあるかもしれないけど、それをお客さまが知りたい順に出してくれる、これはパーソナライズとか欧州系の人達が気にしている部分ともうまくマッチするのではないか。

射場 やっぱりブランドにとってもリテールにとってもデータはものすごく大事だが、すべてのデータを同等に大事にすべきじゃないとも言っていて、誰のデータか、誰を理解しなければならないかが重要なポイントであるようだ。細かに分析するデータを絞っている企業も多く、2:8の法則で、2割のデータを重点的に活用しているという話もされていた。

萩原 ミートアップで話をした中で、D2Cをやる目的は収益性だけではない。顧客を理解したい、それがグローバルブランドならば顧客のバリエーションが増えていく、その中でどう理解するのか、そのために適切なデータを集めたい。データにタグ付けをしたいとか、そういったところにかなり強い意思を持っていることを感じた。

※このレポートは203年6月15日に配信した「DCSオンラインカンファレンス」の講演内容をダイヤモンド・リテイルメディア流通マーケティング局がまとめたものです。

記事執筆者

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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