ベイシアEC戦略に不可欠となる商品マスタデータの重要性

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なぜ、いま、プロダクトデータ革命が必要なのか ベイシアEC戦略に不可欠となる商品マスタデータの重要性

株式会社ベイシア EC部 部長
戸枝 智存 氏


Lazuli株式会社 執行役員営業担当
北庄司 英雄 氏


 

小売業界において、ECやネットスーパーなど実店舗のほかにデジタルでチャネルを広げる取り組みが増えています。しかしながら、商品マスタデータの整備が伴わず、売上を伸ばせていない企業も少なくありません。ECやネットスーパーにおいては商品マスタデータをデジタルセールスに使えるプロダクトデータとして整理し、顧客への情報提供と顧客理解を進めて、ロイヤルカスタマーを増やしていく必要があります。今回の対談では、ベイシアがどのように商品マスタデータを整備し、ECの売上を拡大したのかお話しいただきました。

ECの売上拡大と作業負荷軽減に貢献

データがきちんと管理できていない

北庄司 最初に、なぜLazuli PDPを採用したのかについて、お聞かせください。

戸枝 ベイシアはリアル店舗中心の会社なので、ネットスーパーを始める、ECも真面目に取り組むとなると準備が大変。まず社内に散在しているデータをかき集めてくる作業が大変。さらにデータを集めたものの、そのデータがそもそも不正確。リアル店舗では必要のなかった情報なので、商品登録の段階で結構適当な面もあった。その適当さをネットスーパーでお客さまに見せるわけにもいかないので、そこを正確に直す必要があった。

 そもそもデータがないこともあって、これをつくるのがネットスーパーを始める時の課題。ECでは、お客さまは検索から入って来るが、ベイシアの場合はまだまだNB中心のサイトで、一つひとつの商品にタグをつけるのが大変だった。それが数万アイテムある。ECを始めて10年以上経つが、最初の頃は取り扱う商品数は数百レベル。現在では5万~6万SKUを販売するサイトになった。正確な商品情報を付けるのが一筋縄ではいかないことがわかり、世の中にそれを助けてくれるソリューションもある。そこで片っ端から当たってみた。

 しかし、間違いも多く発生するため、それを修正するのに手間がかかる。ソリューションはたくさんあるが、我々が直す手間を考えると継続が難しい。とくにベイシアはPB比率が高く、PBついてはそもそもデータがないので、データ自体を最初からつくって育てていかなければならない。そうなった時に、Lazuli PDPのようにAIを活用するソリューションの方が、われわれには合っていると判断した。結果として、EC売上も部門によっては何倍にもなり、登録作業も大幅に軽減することができた。

北庄司 確かに情報をとってくるサービスとか、ベイシアでもともと持っているデータを整形するだけのサービスはあるが、われわれはその両方をやっている。新商品の情報拡張やベイシアのPBも含めて、彼らがネットビジネスで求めるカテゴリやタグを生成するとか、いろいろなかたちで対応しているので、そういう部分を評価してもらえたのだと思う。ECの目的は、売上はもちろんだが、消費者が買いやすいサイト構造にしなければいけない。

戸枝 全ての商品にタグをつけるのは、人をどれだけ集めても無理。Lazuli PDPを使って、まずそこが楽になった。あとは間違ったことを直してくれるのが便利。間違いがあってもLazuli PDP側で修正してもらえるので、次からは間違えない。Lazuli PDPは育っていくというか、使う人が増えれば増えるほど、メリットも大きい。

北庄司 おかげ様でどんどん育っていて、カテゴリーもどんどん学習しているので、商品名でどのカテゴリーかということも推定できるようになってきた。そういうところは皆さんからインプットが増えることでAIは学習していく。そこがサステナブルなSaaSとして利用してもらえる強みだと思っている。プロダクトデータがとくにリテールだけでなく、メーカー、卸のビジネスに影響を与えるようになる。商品マスタにプロダクトデータを拡張していくことは、ECやネットスーパー、リアル店舗もつなげるのに重要。その点でもベイシアが顧客をひとつのIDで管理するというのは非常に重要なことだと思っている。

1つのIDで管理しお客さまの体験価値を向上させる

まだまだリテールのDXにおける革命前夜

戸枝 リアル店舗を大事にしたいが、ECも伸ばすためには、絶対に1人のお客さまがオンライン/オフラインで分断されてはいけない。ECで買うものとリアル店舗で買うものはかなり違ってくると思うので、同じ人が全く別の人に見えてしまうのは避けたかった。これからの時代は押し付けるような売り方も難しい。エンドに超有名商品をドーンと山積みした時の売れ方というのも昔とは全然違ってきているし、お客さまを把握して一人ひとりが求めている商品をしっかり提供してあげるということが大事になっている。

北庄司 ショップトーク2023でも、以前のオムニチャネルの言い換えに近い部分もあるが、ユニファイドコマースとかユニファイドエクスペリエンスとかの話が多かった。まさにオンライン/オフラインでお客さまに購買体験を提供するのと、そこからお客さまを理解していくためにデータの統合やデータの使い方が大事になる。そういう意味でも共感したのが、1つのIDで管理するということ。

戸枝 このアプローチは絶対に必要だと思っていて、おそらく健康志向でもあるが節約志向でもある、といったいろんな方がいるはずで、お薦めする商品も変わってくる。そういう世界になっていく。これまでのマスマーチャンダイジングの考え方から一人ひとりに寄り添っていく発想への転換が求められていると思う。

北庄司 フューチャープランになるが、例えば1ℓの水を例に挙げると、この男性はもっとたくさん飲みたいと思っている、でもこの女性は2ℓだと重いと感じる。こういう人に対して1ℓの水をどう扱うか。この1ℓの水のタグが「コンパクト」「スポーツ」「持ち運び」みたいなのがついていて、昨今はやりのChatGPTのような生成AIを使うことで、20代の男性で運動好きの人と、70代の女性で一人暮らしで買物は週2回で、重いものは買いたくない人では、見え方が違ってくる。マスマーチャンダイジングとは全く逆に、デジタルを活用して一つの商品に対してそれぞれのメッセージを生成することは実際にできるようになる。すでにわれわれの方ではこの実験を始めている。

戸枝 お客様に寄り添って一人ひとりの課題や困りごとを解決する。同じ商品でも商品 の特徴を出し分けて伝えるということは、お客さまの体験価値の向上につながると思う。

北庄司 Lazuliとしてはプロダクトデータを小売業のデジタルセールスにつなげられるように、さらに変革していこうと思っている。情報流通を変革するために、デジタルを進化させることで小売業のビジネスを支援していきたい。

※このレポートは203年6月15日に配信した「DCSオンラインカンファレンス」の講演内容をダイヤモンド・リテイルメディア流通マーケティング局がまとめたものです。

記事執筆者

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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