M&Aの達人、アークス横山清社長が語る「協同組合と株式会社を融合させた」M&Aのかたちとは?
コロナ禍の特需に沸く食品スーパー(SM)業界。北海道を中心に幅広いエリアでSMを展開するアークス(北海道)も2021年2月期は好業績となった。21年4月にはオータニ(栃木県)が新たにグループ入りしたことで傘下のSMは10社となり、事業規模はさらに拡大している。現在の市場環境や今後の投資戦略、企業連携の考え方などについて横山清社長に聞いた。
利益確保が今後はより厳しく
──アークスの21年2月期の連結業績は売上高5569億円(対前期比7.3%増)、営業利益177億円(同46.4%増)、経常利益195億円(同41.9%増)、当期純利益129億円(同88.7%増)の増収増益でした。ほかのSMも軒並み好業績となっています。
横山 20年度のSMの好業績は、コロナ禍での消費者の生活様式や購買行動の変化という特殊な外部要因によってもたらされたものです。「コロナ特需」で売上高が伸長したのに加え、価格競争が一時的に緩和し、チラシ特売やポイント付与などの自粛により販管費が低減したことから、増益幅も大きくなりました。20年度の好業績を嬉しく思う反面、特需の後には必ず不況がやってきます。
──21年度は反動減が予測されるなか、アークスも22年2月期の既存店売上高を同1.0%減と見込むなど、慎重な業績予想となっていますね。
横山 21年度の事業環境は20年度とは異なります。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って買いだめ需要が急増した20年度第1四半期と比べて、現在の消費者の購買行動は冷静です。景気の先行きは依然として不透明であり、コロナ禍の収束後も消費者心理は回復しないおそれがあります。売上高を20年度と同等レベルに維持できたとしても、価格競争が再び激化し、販促政策にも相応のコストを要するため、利益は確保しづらくなります。また、今後本格的な稼働をめざすネットスーパーも、収益性が大きな課題となっています。
──ネットスーパーの戦略について詳しく教えてください。
横山 21年5月にネットスーパーの戦略の一環として、グループのSMラルズ(北海道)に新たに「オンラインショッププロジェクト」を設置し、21年秋の「アークス オンラインショップ」稼働に向けて対応を進めています。1年以内の黒字化を目標に、まずは人口20万人規模の札幌エリアで試験的に運営し、成果を検証したうえで、10万人規模、5万人規模と、人口規模に合わせてシステムを改良しながら導入を進めていく方針です。競争の激しいネットスーパーの分野では、新しいシステムとコストパフォーマンスを確立したプレーヤーが生き残るでしょう。
21年度は“大勝負”の年
──21年度第1四半期のSMの状況をどのように評価していますか。
食品小売29社の実力を 20の経営指標で読み解く!「スーパーマーケットスーパーデータインデックス2021」 の新着記事
-
2021/07/14
営業利益率5%をめざすミスターマックスHDの5か年経営指標の変化とは -
2021/07/14
PBとDXの強化を推進!5期ぶりの増益となったPLANTの経営指標とは -
2021/07/14
31期連続で増収増益もコロナで既存店売上減少!ドン・キホーテの5か年経営指標の推移とは -
2021/07/14
スマートストア戦略進行中、EDLP磨くトライアルの強みを経営指標から分析 -
2021/07/13
“ドン・キホーテ流”取り入れ、競争力アップしたユニーの経営指標の推移とは -
2021/07/13
食品で北海道トップシェアをめざすイオン北海道の経営指標を分析
この特集の一覧はこちら [32記事]
アークスの記事ランキング
- 2024-10-23週刊スーパーマーケットニュース ベルク上期決算増収減益も通期では増収2ケタ増益見込む
- 2024-11-15ライフ、U.S.M.H、アークスの25 年2 月期上期決算分析!価格競争で各社減益基調に!
- 2024-09-14北海道・東北の小売業道県別売上ランキング 北海道激戦続く!
- 2020-12-29#17 目指すは業界統一? 八ヶ岳連峰経営でついに関東進出を果たしたアークス・横山社長
- 2013-05-07「勝ち組」企業と手を組み強いチームをつくる=アークス 横山 清 社長
- 2017-01-152025年度売上高1兆円に向け、店舗を地域の中心核にする=アークス 横山 清 社長
- 2019-12-18#9 イオンという「外資」が、3極寡占化を促した
- 2021-03-18アークス、三浦会長の代表権外れる、代表取締役は横山社長1人に
- 2021-03-30アークスの横山社長がオータニの代表取締役相談役に、4月14日に経営統合
- 2023-09-13東北・北海道小売業売上高ランキング2023 積極出店で存在感増すツルハ、ベニマルは大幅増益
関連記事ランキング
- 2024-11-08怒濤の出店で1兆円が見えたロピア!大きな進化と懸念される副作用とは
- 2024-11-07「Foods Park」の17店舗目はイオンの跡地に居抜きで出店!
- 2024-11-18レシートは語る第15回 まもなく関西進出のオーケー、データでわかる競争力と成功のカギ
- 2024-11-0633億円めざすマミーマート、生鮮市場TOPセキチュー上尾店徹底解説
- 2024-11-12価格訴求から価値提案にシフト?「岡崎エルエルタウン店」で見られたロピアの進化
- 2024-11-08専門家がヤオコー久喜吉羽店を徹底分析!斬新な鮮魚改革と意外な課題とは
- 2024-11-08店舗網とM&Aの歴史が丸わかり!最新ロピア勢力図MAP!
- 2024-11-18既存店の数字が良い企業は実践!競合スーパーが進出しても影響を受けない方法
- 2024-10-25物言う株主時代に脚光!宅配以外もスゴい「生協」の事業モデルとは
- 2024-11-13繁盛店は80億円!ロピア、強烈な販売力支える「100%現場主義」の正体とは