主要駅から消える百貨店……ターミナルの新たな覇者となるのは?

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佐賀県唯一の百貨店である佐賀玉屋が、新たなスポンサーである京都の不動産会社に事業譲渡し、再生計画をスタートさせることになった。百貨店事業は存続し、かつ従業員140人の雇用も守られるというソフトランディングであり、老朽化で耐震工事が必要な店舗建物は建て替えするという。少し前に岐阜県が全国で4番目の“百貨店なし県”となったばかりだが、5番目に続くのを免れた格好だ。再生計画の成立に、地元関係者はまずはホッとしているに違いない。

新宿西口の“顔”だった小田急百貨店新宿店は再開発のため本館での営業を22年10月終了。現在は隣接する別館のハルクで営業面積を大幅縮小して営業する
新宿駅西口の“顔”だった小田急百貨店新宿店は再開発のため本館での営業を22年10月終了。現在は隣接する別館のハルクで営業面積を大幅縮小して営業する

閉店相次ぐ地方百貨店

 佐賀県は全国有数のクルマ社会で、ロードサイドの大型ショッピングモールなどへの売上流出が著しく、佐賀玉屋が立地する「佐賀」駅前の中心市街地は空洞化が加速している。さらに隣接県では、福岡・博多という強力な経済圏が今なお拡張を続けており、小売販売の県外流出も現在進行形で進んでいる。

 「佐賀」駅から「博多」駅までは在来線特急でも40分ほど。高速道路も整っているため、ハレの日の買物は西日本屈指の商業集積地である博多で済ましてしまう消費者が多い。佐賀玉屋の売上高はピーク時の1990年代は165億円あったそうだが、直近では46億円に落ち込んでいたというのだから、過去からの債務を整理せずしての再生は不可能だったであろう。ただ、消費環境が大きく改善したというわけでもなく、その道のりは平たんではないことも覚悟せねばなるまい。

 バブル崩壊以降、地方百貨店は極めて厳しい経営環境が続いており、各地で百貨店閉店が相次いできた。百貨店協会によれば、2008年に10大都市(※)以外の地方に185店舗あった百貨店の店舗は、直近では109店舗(2008年比59%減)まで減っている。
※札幌、仙台、東京23区、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡

 10大都市の百貨店の店舗数は同25%減の減少にとどまっているものの、コロナ禍以降はその状況にも変化が見えてきた。東京でもターミナルの大型百貨店が閉店するという事態が起こり始めているのである。

 2023年1月に「東急百貨店本店」(東京都渋谷区)が再開発を理由に閉店したのは記憶に新しい。「渋谷」駅直結だった「東急東横店」(同)は2020年に閉店していて、再開発中の複合ビル「渋谷スクランブルスクエア」の一角を構成する予定となっている。「小田急百貨店新宿店」(東京都新宿区)も再開発のため移転し、その売場面積は以前の2割ほどに縮小。再開発完成後の建物には、「新たな顧客体験を提供する商業施設」が入るということになっている。

 それだけではない。そのお隣の「京王百貨店新宿店」(同)もすでに再開発計画が決定しており、池袋の「東武百貨店池袋店」も池袋の大規模再開発プロジェクトの中に含まれている。これら再開発の完成予想図には「百貨店」という文字はなく、東京の電鉄系百貨店は近いうちに、ほぼ再開発の名のもとに閉店となる、ということなのである。

 背景にあるのは何か。

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