アパレル大再編時代の真相、悲運のバーニーズをラオックスは再建できるのか?
ラオックスホールディングスは5月1日、あのバブル時代に一世を風靡したバーニーズ・ニューヨークの日本での運営会社、バーニーズ・ジャパンの全株式をセブン&アイ・ホールディングスから取得、買収した。私が、2年前に予言した外資、それも中国(ラオックスホールディングスは中国資本の企業である)による日本買いが始まったのだ。今回はラオックスホールディングスはバーニーズ・ジャパンを再生できるのか、そして外資による日本のアパレル買収ラッシュの真相について明らかにしたい。
相次ぐ日本ブランドの買収 アジア市場に引っ張り出す
思えば、昨年のベインキャピタル(米国)による2000億円を投じたマッシュスタイルホールディングスの買収、22年にはティーキャピタルパートナーズ(東京海上キャピタルが前身)によるストライプインターナショナルの買収、19年には伊藤忠商事によるデサント買収など、アパレルの感覚経営を正さんとばかりに、外資による買収を含め、アジアで高いブランド力を持つ日本ブランドの買収が続き、成長市場である東南アジア、インド、グレーターチャイナへ引きずり出す動きが始まったわけだ。
私は昨年、某アパレルメディア専門誌の編集長と企業のグローバル化についてトークディスカッションをし、その浮世離れした感覚に驚いていたところ、「河合さんはどう思うのか」との質問に「日本企業に自ら海外に本格的に打って出る戦略も勇気もない。彼らは、縮小する日本市場にしがみつき、業績を悪化させて株価を下落させ外資に買われて外の世界に引きずり出されるのだ」と切り返した。その通りになっている。
同じやり取りは、先日、行われた小島健輔先生とのトークバトルでも主張した。資本主義のヒト、モノ、カネはいまや国境を越えて世界を走り回っている。なぜアパレルは世界をみないのか、と。私は、事実に基づいた正しい未来予言を行っているだけだ。
買い手の付かなかったバーニーズの末路
実は、バーニーズの買収は数年前からマーケットでささやかれていた。セブン&アイ・ホールディングスのコンビニ集中化戦略により、次々と子会社を売却していたからだ。
一方でバーニーズが渋谷西武に新店舗(小型店)を出したとき、誰もが「やはりバーニーズは売却されないだろう」と思った。このバーニーズのズバリの競合はセレクトショップである。一昨年、私は「バーニーズの成長戦略は、小型店をだしてセレクト業態と戦うことだ」と述べたところ、「米国(バーニーズ・ニューヨーク)の縛りがあって無理だ」と誰彼からも批判された。しかし、縛りどころか、私の予想通りになっている。
さて、現実のバーニーズ売却だが、なかなか買い手は付かなかったのだろう。理由は、惰弱な収益構造は言うまでもなく、私の推測にはなるが、誰もが感じているあの「時代錯誤ともいえるギラギラ感」だ。私のようなバブル世代の人間は、バーニーズの紙袋をもって街を闊歩するのは格好良いと思うのだが、渋谷の新店舗でいくつか商品を買い、紙袋を肩に掛けて渋谷の交差点を歩いたときの違和感たるや、今の先端のファッショニスタから見れば、この時代錯誤のバブル感覚は受け入れがたいものだったのであろう。
それでは、なぜ、ラオックスホールディングスはそんなバーニーズを買収したのだろうか。以下、私が実際に経験した話に、分析を加えて全体総括をしたい。
河合拓のアパレル改造論2023 の新着記事
-
2023/12/26
「低価格×デザイン」だけではない しまむら好調、もう1つの理由とは -
2023/12/19
衝撃!SPA業態そのものには優位性がない、本質的な理由とは -
2023/12/12
日本のアパレルは勝てない!Z世代起点にするDholiCのビジネスモデルを解明! -
2023/12/05
半分以上のビジネスパーソンが勘違い!キャッシュフローと運転資本を正しく理解する方法 -
2023/11/28
仕事激変で商社の競合はコンサルに!人生を自分で切り開くための方法とは -
2023/11/21
やりがちな「スキル採用」で会社がめちゃくちゃになる理由と正しい採用戦略とは
この連載の一覧はこちら [48記事]
![河合拓のアパレル改造論2023](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2023/01/kawai_2023_main.jpg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=0f00edf7449ff01d196911bbc2021f2d)
関連記事ランキング
- 2024-06-25「パリコレ」にアパレル業界人が行かなくなった理由
- 2024-06-11日本人の服がこの10年で「ペラペラ」になった本当の理由
- 2024-06-19インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは
- 2024-07-02日本人が大好きな衣料品セール 安く買うのが難しくなる理由とは
- 2024-06-04定番はユニクロ、ファッション品はシーイン…どうなる日本のアパレル
- 2024-07-09あなたの会社も要注意!「善意の行動」が仕組みを破壊するメカニズム
- 2023-01-06SHEIN TOKYO「売らない店」現地レポート!担当者が明かす、低価格3つの理由とは
- 2024-07-12値下げ率大きいユニクロと値下げ率小さいしまむら どちらが高収益?
- 2024-06-24業態別 主要店舗月次実績=2024年5月度
- 2024-06-20店舗回帰で変貌!OMOが帰着する「ローカルロジスティクス」とは