アスクル独立役員会がヤフーのガバナンス無視を非難 ヤフーは社外取の再任も反対
親子上場では、子会社のガバナンスは守られない
また、弁護士の久保利氏は、子会社が親会社以外の一般株主を持つ場合の「親子上場」の問題点を指摘した。「ガバナンスは日本の資本市場を適切に機能させるための非常に重要なファクターである。日本では親子上場が認められているが、その状態で子会社は合理的なガバナンスを保つことができるのか。『(親会社が)過半数の株式を保持していればなんでもしてよい』という考えは不適切で、(親会社は)権利を乱用する買収者と判断される可能性もある。世界的に見ても稀な状態である親子上場をこのまま維持してよいのかという問題点を突き付けているのが、今回のヤフーとアスクルの事件だ」と久保利氏は自論を展開した。
また、独立役員会は、一般消費者向けの通信販売事業「LOHACO(ロハコ)」の譲渡について、支配株主との利益相反取引に求められる透明性が確保されていないことに対しても懸念している。ヤフーにLOHACO事業を譲渡する場合、アスクルの少数株主の利益保護の観点から、透明性の高いプロセスで譲渡の是非・条件を議論し、対等な関係で交渉することが望ましい。しかし、この状況に至るまでのヤフーのやり方は極めて不透明であり、少数株主の利益を保護できない。独立役員会は「支配株主としての立場を利用して圧力をかけている」と不信感を露わにした。
18日は岩田社長、23日は独立役員会と、2度に渡る記者会見によってヤフーの横暴を世論に訴えるアスクルだが、いまだにヤフーはアスクルと再度話し合う意思を見せていない。8月2日の株主総会までに残された時間はわずかであり、アスクルが状況を打開するのは難しいだろう。最後の手段は、業務・資本提携契約に記載されている売渡請求権の行使だ。そのためには、株式の引き受け先を早急に見つける必要があるだろう。
なお7月24日、ヤフーは、アスクルが2019 年8 月2 日に開催を予定している第56 回定時株主総会の取締役選任議案において、低迷する業績の早期回復、経営体制の若返り、アスクルの中長期的な企業価値向上、株主共同利益の最大化の観点から、抜本的な変革が必要と判断し、岩田彰一郎役社長の再任に反対の議決権行使を行った。 また、業績低迷の理由である岩田社長を任命した責任など総合的な判断から、独立社外取締役の戸田一 雄氏、宮田秀明氏、斉藤惇氏の再任にも反対の議決権行使を行っている。