「簡便・時短」から「タイパ」へ 急拡大する「タイムパフォーマンス」志向
Z世代から広がった「タイムパフォーマンス」志向は、今や主婦層や共働き世帯にまで広がっており、食品・サービス分野でも「タイパ」志向の商品が増加している。簡便・時短から一歩進んだ、時間対効果=「タイパ」の需要について考えてみたい。
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Z世代を中心に急速に浸透するタイパ意識
昨今、耳にする機会が増えた「タイパ」というキーワード。「タイパ」とは「タイムパフォーマンス」の略語であり、「コストパフォーマンス(費用対効果)」をもじり、タイム(時間)に置き換えた「時間対効果」を意味している。
「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2022』」で大賞を受賞した「タイパ」は、Z世代を中心に急速に広がった用語でもある。事例として頻繁に挙げられるのが、録画した映画やドラマなどの動画を倍速で見る「倍速視聴」。デジタルサービスによるコンテンツ過多の環境下、Z世代をはじめとした若年層は常に時間に追われており、「深く理解できなくても世間の動きや話題を網羅したい」「移動中などスキマ時間に見れば効率がいい」といった考え方から、時間対効果の高いショート動画や倍速での視聴を取り入れているのだという。こうした動きを受け音楽配信の世界においても、スキップされないようイントロにキャッチーなフレーズを盛り込んだ曲が流行るといった傾向も見受けられる。
「ながら見」など複数の事柄を同時並行する、効率的な時間の使い方を重視する「タイムパフォーマンス」志向は若年層を中心に広がってきたものだが、以前からニーズとして高かった「時短」志向とも相性が良く、現在は主婦層や共働き世帯に至るまで「タイムパフォーマンス」志向が拡大。それに伴い、動画視聴や音楽配信といったエンタメ領域だけでなく、家事の領域にも「タイパ」を意識した商品やサービスが増加している。
コロナ禍の収束に伴い、高まる「タイパ」志向
「タイムパフォーマンス」志向は、コロナ禍生活4年目を迎え、日常生活の一部がコロナ前の形に戻ってきた現在、加速度的に拡大している。
「セイコー時間白書2022」によると、時間の意識について87.3%が「時間を意識して行動する」と回答。これは対21年比で2.3%増加している。また61.8%が「時間に追われている」と感じ、48.0%と約半数が時間に追われる感覚が以前と比べ「強くなった」と回答している。
さらにコロナ禍以降、時間の使い方で困っていることを尋ねると、「他人がどのような時間・リズムで生活しているかがわからない」(52.5%)、「時間を自分で効率的に計画し、使うことが難しい」(51.1%)が上位に挙げられており、さらに「こなすべきタスクが増えて時間が足りない」と感じる人が37.8%から48.1%と10%弱も増えている。
ナイルのタイムパフォーマンスに関する調査レポートによると、タイパを意識している人に、日常生活でタイムパフォーマンスを意識する事柄について尋ねたところ、最も多かったのは「食事・料理」。その後も「掃除」「仕事」「買物」「洗濯」と続いており、消費者の家事に関する「タイパ」意識の高さが見て取れる。
家事を行う主婦層に訴求するキーワードとして「簡便」や「時短」が広く普及しているが、コロナ禍以降、面倒な作業時間を圧縮することで、自分の好きなことをする時間を創出する「時産」という考え方が少しずつ浸透してきた。
「タイムパフォーマンス」志向は「単純に時間がないため作業効率をアップしたい」という「時短」型の考え方と、「作業を効率化することで生まれたスキマ時間をより大切にしたい」という「時産」型の考え方を併せ持っている。
「タイムパフォーマンス」は現代人においてニーズの高い志向であり、食品スーパーの商品構成やサービスにおいても、今後、必要不可欠な要素となっていきそうだ。