年間120万本! 成城石井「プレミアムチーズケーキ」を生んだパティシエ4年の信念

2020/10/20 05:55
    上阪徹 ブックライター
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    「特別なものを使っているわけではありません。当たり前のものを当たり前に使っている。ただ、安易な原材料で作っていこうという発想はまったくありません。ですから、このボリューム感でこの味、この価格となると、これは成城石井ならではだと思います。他では絶対にできない。食材をこれだけふんだんに使ってもこの価格で収まるというのは、お客さまの多さがあってこそ、なんです」

     製法にもこだわった。チーズケーキ生地は一般的なものの3~4倍の時間をかけ、機械で徹底的に混ぜ合わせる。

    「空気が入らないよう、低速でゆっくりゆっくり回しています」

     食感のアクセントとなるアーモンドは、焙煎した瞬間から酸化し、風味が落ちてしまうので、毎日約1時間かけ、セントラルキッチンで生のスライスアーモンドを焙煎している。

    「単にアーモンドを入れる、と考えると粉砕された小さなつぶつぶになりかねない。スライスで大きなものが入っているのがいいんです。ただ、スライスですからローストするときに手間がかかる。焼き加減を見てひっくり返すのは、人の手ですから」

    レシピがあれば、できるわけではない

     クリームチーズは季節や輸入時の状態によって水分量が変わるので、これもまた人の目で焼き加減をチェックする。

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    「シュトロイゼルにしても、他のケーキ職人ではまずこんなやり方ではやらないだろう、という方法でやってます。同じ材料を使っても、ちょっとした製法の違いで違うものになったりするんです」

    それこそバターの温度ひとつとっても、ちょっと違えば食感の違いになるという。

    「同じ配合でもまったく違うものになりますね。レシピがあれば、誰でもできると思われるんですが、そうではないんです。上のクッキーのところでも、分子レベルで見ると、小麦粉が油脂を包んでいるのか、油脂が小麦粉を包んでいるのか、これだけで違う。大きな機械で回しているとわからないわけですが、口に入れたときには油が先に来るか、ほろっとした食感が来るか、まったく違うわけです」

     そこまでイメージして作れるか、ということだ。レシピがあったとき、そこまでイマジネーションを働かせることができるかどうかが、パティシエには問われるという。

    「ミキサーで粉とバターを練るとき、ただ決められた時間ミキサーを回して練るのと、この粉とバターと砂糖がどんな状態につながっているのか、考えながら混ぜている人とでは、できあがりはまったく違ってくるんですよ」

     そして、そういうことがわかっていなければ、実はレシピは生み出せないのだ。

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