知っておきたい線状降水帯の基礎知識と、流通業界における対策

2023/07/12 05:55
常盤 勝美 (True Data流通気象コンサルタント)
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6月初め、各地に記録的な大雨をもたらした台風2号接近及び梅雨前線停滞の際、四国、近畿、東海地方など多くのエリアで線状降水帯発生情報が発表されました。今回は、線状降水帯に関する情報の基礎知識と、その情報が発表された際のチェックポイントについてまとめます。

Yosuke Tanaka/iStock

「線状降水帯」の基礎知識

 線状降水帯とは「次々と発生した積乱雲により、線状の降水域が数時間にわたってほぼ同じ場所に停滞する」現象を示します。通常、雲(雨雲)は、上空の風に乗って風上側からやって来て、その場で雨を降らせた後、風下側に流れていきます。
※出典:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jma_suigai/jma_suigai.html

 線状降水帯は風向きや水蒸気の量、地形などの要因が重なることにより同じような場所で立て続けに発生発達した雨雲(積乱雲)が、列状に風下側に流れていく現象です。それが数時間にわたって途切れなく続くため、風下側の地域にとっては発達した雨雲がしばらく停滞した状態となります。大雨に発展する可能性が極めて高く、災害の危険性も高まります。

 気象庁では、令和3年度から「顕著な大雨に関する気象情報」の運用を始めています。昨年度(令和4年度)には、線状降水帯による大雨の可能性の半日程度前からの呼びかけを開始し、今年度(令和5年度)から、「顕著な大雨に関する気象情報」をこれまでより最大30分程度前倒しして発表する運用を開始しています。少し詳しい解説をつけて、以下に時系列でまとめます。

「線状降水帯」に関する情報の時系列

令和3年6月17日:「顕著な大雨に関する気象情報」の運用開始
従前から、「記録的短時間大雨情報」など、記録的な大雨の観測に関する情報は発表されていました。それ(いわゆる大気の不安定な状態による局地的ゲリラ的な短時間の豪雨)と区別し、「線状降水帯」発生等にともなう大雨を観測し、災害の危険性が高まっていることを伝えるものとして、注意報・警報とは別個の情報が新たに発表されるようになりました。
令和4年6月1日:通常の予測手法に加え、スーパーコンピューターを活用した世界最高レベルの技術による線状降水帯予測開始
気象庁が日々計算を行っているスーパーコンピューターも非常に高性能のものですが、それに加えて世界最高水準の処理技術を持つスーパーコンピューター「富岳」を用いた予測計算の活用が始まりました。線状降水帯発生状況等に関する予測の精度がさらに向上することが期待されます。
令和5年5月25日:これまで発表基準を実況で満たしたときに発表していた「顕著な大雨に関する気象情報」を、予測技術を活用し、最大で30分程度前倒しして発表する運用開始
これまでは気象庁が自ら定義する”顕著な大雨”の基準を満たす降水が観測されてはじめて「顕著な大雨に関する気象情報」を発表していましたが、今後は、高精度の予測技術によって基準を満たす降水が観測されると予測される場合に(従前に比べて最大30分前倒しで)発表されるようになりました。

 

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記事執筆者

常盤 勝美 / True Data 流通気象コンサルタント

株式会社True Data 流通気象コンサルタント  神奈川県小田原市生まれ。

大学で気候学、気象学を専攻した後、20年以上にわたり民間気象情報会社にて、コンビエンスストア、スーパーマーケット、食品メーカーなどに対してウェザーマーチャンダイジングの指導などを行う。現在は株式会社True Dataに所属し、流通気象サービスを推進している。著書に「だからアイスは25℃を超えるとよく売れる」(商業界)など

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