苦境のモールREIT、テナントの戦略変更 岐路に立つショッピングモールのいま

私の買物圏にホールフーズ・マーケット(Whole FoodsMarket)とトレーダージョーズ(Trader Joe’s)が同居して競合しているCSC(コミュニティ型ショッピングセンター)がある。ライトエイド(Rite Aid)、ベッド・バス&ビヨンド(BedBath &Beyond)、そしてナイキストア(Nike Store)といった知名度の高いチェーンストアも入居している繁盛SCだ。ホールフーズの隣のローカルストアが閉店し次のテナントの工事が始まって誰がやってくるのかと見守っていたところ、フランスのコスメ専門チェーン・セフォラ(Sephora)の看板が上がり、なるほど発表していた戦略どおりだなと膝を打ったのであった。

セフォラが今年計画している米国での新規出店数は260店舗で21年間の歴史で最大と謳っているのだが、内訳はモール外が60、百貨店コールズ(Kohl’s)内の店舗内店舗が200で、モール内は1店舗もないのである。
公式リリースにはこう書かれている。「昨年はECが急速に伸びたが、リアルという店舗環境とおもてなしのスペースをつくり続けることに自信を持っている。オフモール立地に焦点を当てることによって全米のビューティショッパーがアクセスしやすくなることをねらう」
セフォラは35カ国に約2700店舗、米国に約500店舗を展開しているグローバル企業だ。この500店舗のうちモール外にある店舗は大都市のダウンタウンにある路面店が主体で数十店舗といったところである。既述のようなCSCに立地している店は今まで見た記憶がないしあったとしても数は少ない。つまり立地戦略を根本から変えたということなのである。
本連載でも何回か書いたことだが米国のモールは大きな岐路に来ていて、セフォラのCSC出店はその象徴的な出来事だと思っている。
大型モールを脱する動き続々
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