親指サックが30万足の大ヒット! 「タビオ」に学ぶ成果の上がるX運用術とは

編集プロダクション雨輝
Pocket

バズった商品は即座にECや売場へ反映

 タビオはXのフォロワーを増やしたことで、ユーザーがリアルタイムに興味を示している商品を探る“観測気球”としてXを活用することが可能になった。

 「1日の投稿数約30のうち、5つ程度を“観測気球”として投稿している。店頭用POPとは異なり、SNSであれば即座にユーザーの反応を確認することが可能で、反応がよい商品はすぐに営業部や商品部、Webチームに共有し、ECサイト内の商品特集や店頭用POPに反映する。投稿1つですぐに売上が上がることはないが、投稿の切り口から何がフォロワーの心を揺さぶったのかを読み取ることができる」(田口氏)

 公式アカウントは店舗スタッフもチェックしているため、X上の反応を即座に売場へ反映することが可能だ。さらに、接客だけでは伝えきれない商品の機能性をXで発信することで、お客が来店中以外の時間も需要を喚起する。

 一方で、今後はフォロワーの拡大をめざしていくわけではないと部長の栃真賀氏は話す。

 「SNSの運用目的は、あくまでブランド認知の向上だ。フォロワー数はさほど重要な指標ではなく、フォロワーの関心をどれだけ集めているかを最も重視している。フォロワー数に捉われ単なる商品紹介に終始して投稿の価値を下げることはしない」(栃真賀氏)

“ツイ廃”の知見をフル活用し、炎上リスクを軽減

 企業SNSの投稿は、たびたび炎上することがある。企業にとってSNS運用は先述したメリットもあるが、企業イメージに傷がつくリスクもある。それでもタビオはSNS運用において部署内にチェック体制やレギュレーションをほとんど設けておらず、投稿内容を各運用担当者の感覚に任せているという。

 栃真賀氏は、「実際の運用内容はすべて各担当者に任せている。致命的な炎上を経験せずに運用できているのは、創業者が社員に対して頻繁に説いていた企業理念である『お客さまにとってよいもの、よい情報を提供する』という信条が社員に浸透しているからだと考えている。その意識から外れた言動はしないだろうと社員を信頼している」と説明する。

 実際の運用において、最も炎上リスクに対する嗅覚がするどいのは田口氏だという。

 田口氏は自らを「ツイ廃」(Twitter廃人の略。現Xの利用頻度が高く日常生活に影響するほど没頭する人を指すネット用語)と称する。かつてスーパーバイザーや広告管理を務めていた田口氏は、自身がツイ廃であることを会社にアピールし、Xの運用担当に任命された経緯を持つ。Xのプライベートアカウントでは、日々さまざまな炎上案件を見て、対応のノウハウを蓄積しているほか、見落としがちな視点は、同じくツイ廃だという田口氏の妻にアドバイスをもらうこともあるという。

 今後のSNSの運用方針について、栃真賀氏は次のように話す。

 「現在、SNS運用に適性のある人員を積極的にマルチメディア企画部へ配置し、個性の幅を広げようとしている。XのほかYouTubeInstagram、ブログなどの各SNSに、コスプレやeスポーツなど、各自が興味のある分野で情報を発信してもらい、各分野のファンと共に盛り上がれるようなアカウントを増やしていく計画だ。WEB上でもリアルでもイベントを積極的に開催してエンタメ性を高めていくことで、企業プレゼンスを高めていきたい」

1 2
© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態