オーケー進出で急変する競争環境……関西小売市場は誰が、どう変わるのか?

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

各社が独自性を磨き“共栄” の構図を生む

 競争環境が大きく揺れ動くなか、企業に求められる姿勢も変化している。関西の小売市場に詳しいサミットリテイリングセンターの新谷千里氏は、今後の関西市場では「柔軟性」と「変化対応力」がいっそう重要になると強調する。小売企業各社は単なる価格競争に終始するのではなく、自社の強みを明確に打ち出さなければならない。

 そのためには、ローコストオペレーションによって生み出した余力を、売場改善や商品開発、人材育成に再投資していく必要がある。こうした変化への対応を怠れば、市場競争を勝ち抜くことは難しくなる。

 市場に目を向ければ、競争のあり方そのものも大きく変わりつつある。本特集で調査を行ったKTMプラニングRの海蔵寺りかこ氏は、「競合店同士が独自性を追求した結果、すみ分けが成立し、“共栄”している例もある」と指摘する。

 たとえば兵庫県西宮市の西宮北口エリアでは、「オーケー西宮北口店」と「ライフ西宮北口店」が至近に店を構えつつも、それぞれが異なる強みを打ち出したことで、2店を使い分ける顧客が少なくないことがうかがえた。その結果、双方が繁盛するという相乗効果が生まれている。それぞれが独自性を徹底的に追求することで顧客の使い分けが進み、“共栄”の関係が築かれているのだ。

 ただし、この事例はあくまでも両社ともに自社の強みと独自性を高いレベルで追求しているから成立しているにほかならない。競合他社の安易な“模倣”や“ベンチマーク”に終始していては、競争の土俵にすら上がることができず、遅かれ早かれ淘汰を迫られることになる。

 関西市場での競争が激化するなか、小売各社には、いかに自社の強みを際立たせ、他社と巧みに差別化を図りながら、顧客ロイヤルティとマーケットシェアの向上を実現するかが問われる。本特集では、実際に各社がどのようなアプローチで独自性を磨き、自らの立ち位置を確立しようとしているのかに追った。

 人口減少が進み、限られたパイを奪い合う競争が全国で熾烈化するなか、関西市場における競争構図と各社の戦略を俯瞰し、分析することは、自社の競争戦略を描くうえでも大きなヒントとなるはずだ。

 

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記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

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