万代とロピアが“共存”!? 西宮・今津エリアに見るポジショニング戦略の重要性

解説:海蔵寺りかこ (KTMプラニングR代表)
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兵庫県西宮市南部の今津地区は、高齢単身層と若年ファミリー層が混在する高密度の住宅地が広がるエリアだ。豊かな商圏とあって、周辺は有力チェーンが集まる激戦区だが、2024年12月にロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)が「ロピア西宮今津店」を出店したことで、競争はいっそう過熱している。

そうした中、ロピアと異なる戦略で差別化を実現しているのが、万代(大阪府/阿部秀行社長)の「万代西宮今津店」だ。商圏の特性を踏まえたすみ分けが、両店の共存を可能にしている。

※調査日:2025年4月4日 文中の価格は調査日のもの、本体価格

体験型売場づくりで他社を圧倒するロピア

 兵庫県西宮市の今津地区は約1.4k㎡の範囲に約1万5000人が暮らす、市内でも有数の人口密集エリアだ。高齢単身世帯と30~40代の若年ファミリー層が混在し、買物ニーズは多様とみられる。

 競争は激しく、同地区内には「万代西宮今津店」のほか、5月下旬にイオンリテール(千葉県/古澤康之社長)運営の「そよら」へと転換予定(現在は休業中)の「ダイエー西宮店」、今津地区に近接する徒歩圏内の場所に「関西スーパー浜松原店」や「コープ西宮南」など、複数の食品スーパーが密集している。

 こうしたなか、24年12月にロピアは阪急今津線「今津」駅から徒歩15分の場所に「ロピア西宮今津店」をオープンした。同店は競争が激しい今津エリアで、他社とは異なるアプローチで存在感を示している。

ロピア西宮今津店外観
ロピア西宮今津店
●住所: 兵庫県西宮市今津港町1-26 コーナン西宮今津店2階
●営業時間:10:00~21:00
●駐車台数: あり
●アクセス: 阪急今津線「今津」駅から徒歩15分
●オープン: 2024年12月

 ロピア西宮今津店では、同社の強みであるエンターテインメント性を前面に打ち出した売場づくりをしている。たとえば、生鮮部門の途中に加工食品売場を挟みこんだり、加工食品エリア内にあえて行き止まりのある通路を設けるなど、迷路のようなレイアウトとしている。来店客の回遊を促し、歩行距離が自然と伸びるような構成としているのだ。

 さらに、既存店同様、目をひくPOPで各商品の価値訴求を徹底し、相対的な安さを演出する点は、ロピアの得意とするところである。

 強みとする精肉売場は、黒毛和牛や銘柄牛を中心とした品揃えで、「みなもと牛ステーキ用盛り合せ切り落とし」(100g499円・600g前後)など、牛肉は焼肉やバーベキューなどファミリーで食卓を囲う「焼きメニュー」が軸となっていた。

 一方、鶏肉は「国産若鶏モモ唐揚げ・カレー・シチュー用(味付)炭火焼風ねぎ塩焼き」(100g119円・500g前後)など、大容量の味付き商品を豊富に揃え、食べ盛りの子どもを持つファミリー層のまとめ買いニーズに対応していた。

 総菜・スイーツ売場では、「お弁当・お惣菜大賞」で多数の受賞歴をもつグループの総菜製造会社・利恵産業の商品が目立ち、「食べるタルタルソース」(350円)や「沖縄風ソーキ蕎麦」(650円)といったユニークなアイテムが並べられている。

 また、関西圏の地場メーカーとの協業も進んでおり、

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解説

海蔵寺りかこ / KTMプラニングR 代表

食品コンサルタント
1級色彩コーディネーター、カラーデザイナー、UCアドバイザー

大阪府吹田市出身。広島大学卒業後、イトーヨーカ堂で食品事業部の計画や販促企画を担当し、惣菜部のシニアマーチャンダイザーに就任。​その後、ヤオコーで営業企画部クッキングサポート担当部長として提案型マーチャンダイジングに従事。​現在はKTMプラニングRを起業し、食品スーパーやメーカーのMDサポートを行うほか、データコム株式会社のアドバイザーとして小売業支援に携わっている。

KTMプラニングRホームページ

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