オーケー進出で急変する競争環境……関西小売市場は誰が、どう変わるのか?

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

独自性を磨き上げる関西地場の有力企業

 そのような状況下、関西地場の有力小売企業はそれぞれの独自性を磨くことで、熾烈化する競争を勝ち抜こうとしている。

 とりわけ存在感を放っているのが万代(大阪府/阿部秀行社長)だ。同社は関西圏で169店舗(25年3月末時点)を展開し、「関西では高い顧客ロイヤルティを得ており、非常に手ごわい存在」(業界関係者)と評されている。万代の和久正樹取締役は「関西は競争が白熱しているといわれるが、うち(万代)はとくになにも変えていない。やるべきことを、変わらず続けているだけだ」と、オーケーの二宮社長同様に「変わらないこと」を戦略の根底に示す。

 ただし、戦略の中身と方向性はオーケーとは真逆だ。万代の基本戦略は「ハイ&ロー」、つまり特売を軸にメリハリをつけた価格訴求である。単なる安売りではなく、「今日はこれだけ得した」という顧客の高揚感や納得感を生み出すことに主眼を置いている。万代が打ち出す多彩な販促企画は、集客効果が高く、ついで買いを促すことで、店舗全体の販売点数を押し上げる役割を果たしている。

 万代の最大の強みは、「価格と品質の両立」だ。関西の消費者は、価格だけでなく品質にも厳しい目を向ける。「正しい商品を、正しいサービスで、正しい価格にて提供する」ことを企業理念とする万代は、仕入れから販売に至るまで徹底した品質管理を行っている。

 また、万代では品質を支える「現場力」の維持・向上にも余念がない。近年、人手不足が業界共通の課題となるなか、万代ではパート・アルバイトの時給を関西トップクラスにまで引き上げ、人材の採用と定着に積極的に取り組んでいる。価格、品質、現場力。その三位一体の強さこそが、万代が関西市場で高いロイヤルティを維持する原動力となっているのだ。

 ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)も「同質化競争からの脱却」を掲げ、独自路線を鮮明にしている。「BIO-RAL」や「ライフプレミアム」といった価値訴求型のプライベートブランド(PB)で集客力を高める一方、日常使いの商品には「スマイルライフ」など価格訴求型PBを活用。価格と価値のバランスを巧みに取り、価格軸の競争とは距離を置いたポジショニング戦略をとっている。

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記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

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