ムダ多く割高!日本のアパレル生産が「ガラパゴスの壁」を越える方法

小島健輔(小島ファッションマーケッティング代表)
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我が国ではアパレルに「需給ギャップ」は付き物で「相応の値引きや残品は致し方ない」とする諦観が根強く、そのロスが価格に上乗せされるのが当たり前になっている。一方デジタル・トランスフォーメーション(DX)が先行する欧米やアジアでは生産・供給に要する時間を画期的に圧縮して需給ギャップを最小化するデジタルプラットフォームがサプライチェーンを一変させている。我が国アパレル業界はまたまたガラパゴスに取り残されるのだろうか。小島健輔氏が解説する。

Albert_Karimov/istock
Albert_Karimov/istock

需給ギャップは「時差」がなければ解消できる

 需給ギャップが生じる最大要因は需要と供給の「時間差」で、需要と供給に時差がなければ、あるいは需要が供給に先行すれば需給ギャップは生じない。生鮮食品は日々、競りで需給調整が行われ価格変動が需給を擦り合わせるから需給ギャップは短期で解消されるが、需要に生産が何ヶ月も先行するアパレル商品は見込み生産の売り減らしになりがちで、需給ギャップを値引き販売などで無理やり擦り合わすことになる。

 国内産地が衰退してしまった我が国のアパレル業界では、コストと品質を両立しようとすると海外生産のリードタイムが長くなり、「相応の需給ギャップは致し方ない」というギャンブル諦観論が大勢のように見受けられる。アルゴリズムやAIで需要予測の精度を追求し、作ってしまった在庫の配分や移動、販売消化を工夫して、値下げと残品のロスを抑制することに注力しているが、それでは需給ギャップを解消できないのが現実だ。

 どんなに予測精度を上げても予想外の事態が起きれば計画と販売消化が乖離し、値下げと残品のロスも計画値を飛び抜けてしまうが、「予想外」が頻発するのが現実だから予測精度の追求には限界がある。ならば、需要の現実に供給を即応するか需要が確定してから供給する方がはるかに確実ではないか。

 欧米やアジアの革新的なアパレル事業者はデジタルプラットフォームを駆使して、作る段階から需給ギャップを最小化するサプライチェーンマネジメントを志向している。『需要の予測は困難でも、需要に時差なく生産・供給を即応すれば需給ギャップは許容範囲に抑制できる』というマネジメントスタンスであり、『生産先行の売り減らしゆえ需給ギャップは致し方ない』と諦観する我が国アパレル業界とは根本的にスタンスが異なる。

 「売ってから作る」なら需給ギャップは生じない

予約販売商品は日本でも一般的だ
予約販売商品は部分的ながら、日本でも一般的になってきた

 我が国でもECサイトの先行販売やクラウドファンディングで注文を取ってから作るという「予約販売」が部分的ながら行われているが、韓国や中国の越境ECでは『受注してから仕入れるのでお届けに時間がかかります』と正面切って断る商品も少なからず目に付く。元より消化仕入れの我が国百貨店のECサイトでも『お取り寄せになるので通常より○日多くかかります』と断る商品も散見されるから、珍しい商売ではないようだ。

 これらはメーカーや問屋が在庫を抱えて供給しているから、小売業者は需給ギャップのリスクが無い分、メーカーや問屋が需給ギャップのリスクを負担している。その分、

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