本多利範氏が指摘する「家族モデルが消失」した日本で小売業が果たす役割とは

2024/05/23 05:59
本多利範
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長らく続いてきた日本の家族モデルが大きく様変わりしている。単身世帯が急増するほか非婚化も進む。今後、人々は家族で支え合うのではなく、個人と個人が見守り合う社会がやってくる。本多コンサルティング(東京都)の本多利範氏は「社会が大きく変化する時代にあり、小売業もいかにニーズに応えるかが重要だ」と話す。
 本稿は連載「教えて本多利範さん!」の第5回です。

Hanafujikan/iStock

「おひとりさま政策課」を設置

 かつて日本社会における重要な単位のひとつは「家族」だった。1978年の『厚生白書』を見ると、高齢者の約7割が子供世帯と同居し面倒を見ていた。経済的成功が改革を遅らせ、そんな家族モデルが固定化された。女性の社会進出の遅れは「失われた30年」の要因にもなった。

 時は流れ、そんな日本の家族は一変した。現在、一般世帯に占める単独世帯の比率は38%にも上る一方、3世代同居は4.1%と限定的だ。かつて多かった「夫婦と子供2人」の世帯も1割を切った。さらに非婚化も進むうえ、結婚したカップルは3組に1組が離婚する。日本は「総おひとり様社会」に入ったと言えるだろう。

 その中で「個人」を「孤独」にしない動きが見られる。

 兵庫県尼崎市では、70〜80代の単身女性が同じ共同住宅で住む「近居暮らし」の取り組みを15年続けている。普段の生活は独立しているが、不足の事態が起きれば互いの部屋に駆けつける。互いの介護はしない決まりだが、仲間が近くにいてくれるだけで人生が充実したと参加者は感じているという。

 神奈川県大和市は2021年、「おひとりさま政策課」を設置。交流の場の紹介や終活支援の各種施策を実施している。単身世帯が増える中、市民の孤立を防ぎ、最期のサポートをするのがねらいだ。

 神奈川県横浜市の「すすきの団地」では2023年12月、高齢者支援の事業者などでつくる団体が、ある実証実験をスタートした。家族の支援を受けられない高齢住民に「アドボケーター」という支援者をつけるというもの。認知機能が衰えた場合の対応を、医療機関や介護事業者と協議する専門職だ。家族の代わりに、意思決定を支える存在として期待される。

 これらのように「家族」が消えつつあるという社会の変化に対し、全国各地で「個」と「個」をつなげる活動がじわり増加する。

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