メタバースが時期尚早すぎる理由と、将来のアパレルへのインパクトも小さい理由
バーチャルオフィスの服に課金して買う未来があると思うか?
メタバース の可能性でもう1つ考慮したいのが、バーチャル・オフィスの一般化に伴う影響だ。バーチャルオフィスとは、例えば北海道と沖縄に住んでいる人が、アバター上でスーツを身にまとい同じ会議室で議論をすることができる仮想オフィスで、すでにいくつかのゴーグルにバーチャル・オフィスが存在する。今は、英語がほとんどだが、やがて日本語化され、自宅にいるまま会議ができたり共同作業ができたりすることが一般化するだろう。私も、早速試してみようと思っているところだ。
また、役員向けの資料作りは、MicrosoftのCo-pilot (パワポやExcelによる分析は先日ご紹介したChat-GPTとの対話で一定レベルのものができる技術) を3月中にリリースするという。これが、Microsoft TEAMSと組み合わさって、都内のオフィス需要を一気に奪う可能性さえある。AIによる知識労働が増えるほど、社員同士の距離は物理距離とは関係なくなってくる。
CHANELやHermèsは、アバターに、300円、500円という価格でロゴのついた服を身につけるサービスを開始している。一部Z世代ではこうした課金をする人もいるらしいが、実際、こんなことが一般化するわけがない。例えば、実際、日本人の35%が来ているユニクロというロゴを数百円でもよいのであなたは買うだろうか?こうした、一般庶民の感覚を知らない人間を有識者に選び、それが技術を間違った方向性に誘っているのだから、もはや老害と化した有識者達を一気に変えるしかない。
デジタル技術は、あくまでも私たちの活動を効率化してくれるツールに過ぎない。遠くからわざわざ行かなくてもオフィスワークができるため、例えば、お客の元へ訪問する際には、実際の人間がdunhillでもZEGNAでも好きなスーツを着てゆけば良い。
例えば、先日ニューヨークで開催されたNRFもメタバース上でやれば、わざわざニューヨークまでいって一人百万円のコストを払う必要もないわけだ。そうすれば、若くて有望な人材が米国の技術を学び、毎回でてくる広告代理店やコンサル会社の解説を聞く必要はなくなってくる。米国のシンガーのライブが聴けるのだから、NRFの展示会が開催できないわけがない。
私がこの手のテクノロジー談義に入るとき、いつも違和感を感じるのは、まことしやかにメタバースについて雄弁に語る人の中で、ゴーグルを実際に自分で買って持っている人は一握りだということである。自分で使ってもいないメタバースにどのような可能性があるのかを、触ったこともない人間がなぜ分かるのかということだ。だから、あれだけ素晴らしい技術も所詮はゲームやジェラシックパークの恐竜に襲われる、レベルの発想しか出てこないのだ。さらにいえば、あんな重いものは、30分も被っていたら頭が痛くなることもよくわかる。そうなれば、あのゴーグルがサングラス程度の重さになれば、一気に広がるだろうと分かるはずだ。しかし、今は、数多あるハードウエアを連携された企画もなければ、幾度も日経新聞などで紹介されている「渋谷の街」がどこにあるのかさえわからない。これは、実物に触ってもいない人達が空想の世界でああだ、こうだといっているからだ。
いうまでもなく、「ゴーグルの重量」こそ、乗り越えるべき落とし穴であることなのだ
まとめよう。メタバースのビジネス活用に無目的に狂乱している人は歴史から学んでいるとは言いがたいと私は思う。メタバースはまだまだ技術としては先の話であり、実際に、有識者達がゴーグルを使ってビジネス活用をはじめなければ、この技術これ以上進化しない。今、可能性があるとしたら、a) バーチャルオフィス、b)人口減少化したリモートエリアの仮想店舗。あとは、圧倒的にゲーム業界で使われていくだけだろう。
小売産業で言うなら、世界中でユースケースさえ見当たらず、お隣の韓国でさえ、起こりそうにないという意味で「Last technology」と揶揄されているメタバースに未来が見える人は一体それがなんなのか教えていただきたい。建設的な議論はいつでも歓迎するが、もはや周回遅れとなった日本のアパレル産業は、こうしたヴィジョンを持ちながら、すでにいくつかの投資が始まっていなければ、来るべき世界戦(Z世代が購買の中心となる)でテクニカルノックダウンを食らわされる。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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