メタバースが時期尚早すぎる理由と、将来のアパレルへのインパクトも小さい理由

河合 拓
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韓国ではDXは時代遅れ。特にメタバースには最も懐疑的

 私は毎週末、アジア各国の仲間と情報交換を行いメディアで決して報じられない「今」についてリアルな情報交換をし、5月には韓国講演が決まった。その中で、幾人かの有識者、財閥系の人間と韓国のアパレル業界事情について韓国の「今」について議論をしたところ、興味深い話が出てきたのである。 

 韓国では、ポストコロナ、つまり、コロナの次に来るものは何かという議論が再燃している。その議論の中で「そもそもアパレルにDXなど必要なのか」という見解が大多数を占めているようなのだ。

 それらの「N数」はさほど大きいわけではないことを前置きしておきたいが、議論をしたのは、韓国財閥の人間とアパレル企業経営幹部、および、経営コンサルタントなどである。事実として、過去繰り返されたDXと称するものの中で、成功した事例はほとんどないことがその前提になっており、日本が成功しているとしたら、その秘訣を知りたいというのだ。今、韓国アパレル産業を賑わしているのは、ポストコロナ。つまり、成長がとまった経済下において伝統的衣料品産業がいかに成長し続けうるのか、という議論のようだ。

  私は過去韓国に半年ほど毎週のように通い詰め、韓国産業界の特殊性について嫌というほど学んできた。韓国の有識者は「韓国のようなフランチャイズ大国では、戦略など不要。流通のほとんどを押さえている財閥企業であるロッテを押さえれば勝ったも同じで、百貨店からショッピングセンター、GMSなど一手に引き受けることが可能になる」と口を揃える。

 私は、現場で徹底してハンズオンをやってきたから、彼らのいうことはよく分かるが、リアルビジネスとは結局はこういうことなのだ。学者が書くような綺麗なフレームワーク通りにはいかないのがリアルビジネスである。

 プロジェクトというのは人間をダメにする。たかが仕事であるにも関わらず、その仕事をスタートしたというただそれだけの理由で、経営者のいずれも、そのプロジェクトを止めることができないのだ。そして、当然ながら勝ち筋も見えないまま見切り発車した仕事は時間とともに損失がどんどん大きくなって、さらに、その損失の大きさがプロジェクトの停止をよりいっそう難しくさせるという地獄のスパイラルに入ってゆく。私の知る経営者は私にこういった。「最近、私のところに決済があがってくる判断のほとんどは億円単位で、中には数十億という投資さえあがってくるため、ROIも見えないまま決済を迫られる」と。

  今朝、韓国との討議で仕入れた情報が「メタバース」だ。この技術は後にも先にも技術者のもので、顧客にとってなんらメリットはないという見解だった。メタバースについては、このような話をあちこちで聞く。メタバースに資源集中を表明し、Facebookから名前を変えたメタ・プラットフォームズの株価は下落の一途をたどり、一時は25%も一日で下がったことを記憶に新しい。にも関わらず、そのDX不要論が叫ばれる韓国でも、メタはメタバース市場を開拓しようとその先頭を走っているというのだ。このあたりの詳しい内容については、日本、中国、韓国の3か国を結び、5月に開催されるウェビナーで徹底討論する予定なので楽しみにしてもらいたい。選りすぐりの人選で本討議に挑もうと思っている。

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