過当競争と言われるコンビニ業界で、セブン-イレブンが店数を増やせると考えられる理由
CVSは過当競争なのか?
個店経営を創始したセブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)は、業界でいえば「コンビニエンスストア(CVS)」である。日本の人口は約1億2000万人、世帯数は約5350万弱、CVS店数約5万7000店。割り算してみると、1店舗当たりの人口は約2000人余、世帯でいえば約1000世帯弱になる。
全国のCVSチェーンの出店濃度を調べた地図をつくった人もいる。それによると、中部はセブン-イレブンが多いが、ほかの地域では必ずしも店数トップではない。セブン-イレブンの本社がどう考えているかはわからない。だが私には、出店する余地はまだ大きいと思える。先のデータを挙げて、「CVSはすでに『大激戦』になっている」「これ以上出店する余地はない、消耗戦になるだけだ」といわれるかもしれない。店数濃度が低いからといって出店余地があるというのはあまりに楽観的ではないか、ともいわれそうである。
このようにビッグデータを分析して答えを求めていくのが、いわゆる「マーケティングの常識」である。その見方に従えば、これから日本においてセブン-イレブンの店数が飛躍的に伸びることは望めない。それどころか、この先は絶望的で出店先を外国に求めるしかない、と。なぜならCVSは、CVSだけでなく、外食業、とくにファスト・フード(CVSの商品の多くは事実上、ファスト・フードである)やスーパーマーケット(SM)ともすでに大激戦になっている。加えて、今出店攻勢がさかんなスーパー・ドラッグストアとも、取り扱い商品が重複している。セブン-イレブンの将来は多難である──。
これらは、「マーケティング専門家」としてマスメディアに出てくる人物が垂れ流す言説の代表例である。彼らがデタラメを言っているのかというと、そうではない。彼らの挙げる数字は間違っていないし、それらのビッグデータを分析して出てくる結論も論理的に決して間違いではない。ではなぜ、セブン-イレブンはまだ出店の余地があるというのか。
無店地帯は「創る」もの
「マーケティング」「ビッグデータ」の名を冠するもっともらしい分析のほとんどは、マーケティングや統計学はプロフェッショナルでも、「チェーンの経営」、いや「経営」の本質については、完全なアマチュアによる無知といわねばならない。なぜなら経営とは、「競争して、相手を圧倒して、勝つ」行為だからである。個店経営はその最大の武器である。
マーケティングではかつて、「大衆か分衆か」という論争もあった。だがセブン-イレブンが個店経営を奨めるのは、自店の商圏のカスタマーのニーズにだけ応え、ニーズを創るためであって、大衆・分衆論には何の関係もない。ほとんどのマーケティング専門家の発言は、企業経営から見れば、もっともらしい総論や結論や予測をする「ゲーム」でしかない。だが、企業は自社のカスタマーのみを見ており、セブン-イレブンは自店の商圏しか見ていない。全国データなどとは無縁なのである。
CVS1店舗当たりの世帯数が約