日常の取り込みと個店経営……第二創業で目指す「無印良品」売上3兆円への青写真とは
地域の課題に踏み込むことで生活を包括サポート
今年5月にオープンした無印良品港南台バーズ店(横浜市)は、同社が目指す小売りの今後のモデルケースといえるだろう。閉店した高島屋港南台店に跡地に誕生した同店は、関東エリアでは初となる大型の食品売場を備え、百貨店閉店で手薄になった地域の食を支える。食品売場にはキッチンカウンターが併設され、レシピを紹介したり、入荷状況の報告などが行われる。さらに生産者による情報発信も定期的に実施される。
1階には「感じの良い暮らしをサポート」する「MUJI SUPPORT」も設置。部屋の模様替えや服選びなど、日常生活に関するやりたいことの相談に乗り、アドバイザーが親身にアドバイスする。さらに、子会社の「MUJI HOUSE」を通じ、近隣の老朽化した団地のリノベーションや部屋のプランニングを行うなどで、地域のリノベーションも計画。進む高齢化に対応し移動販売や出張販売も視野に入れ、文字通り地域に根ざしてその生活を支える。
生活必需品を販売するだけでなく、その先にある生活にまでかかわることで、顧客とのより深い関係を構築。同時に地域の資源や資産ともリンクすることで、地域の魅力も高めるーー。「2030年に3兆円」はとてつもなく高いハードルのようにも見えるが、地域と密接にリンクしながらの拡大戦略はやみくもに数字だけを追うアプローチとは一線を画しており、十分な現実味を感じさせる。