「大きなD2C」へ向かう未来のデジタル・アパレルの姿とは
日本の伝統的アパレル、D2Cへの変異は不可能 どうする?
過去、説明したように企業というのは、足し算は得意だが、引き算は苦手だ。一度、構築された中太りした流通構造、全体感なく幾度も繰り返すシステム改修や導入、あるいは、採用によって肥大化した販管費をD2C企業に張り合うほどそぎ落とすことは不可能だ。残念だが、日本のアパレルが冒頭で見せた「将来の勝者のビジネスモデル」に突然変異することはない。
しかし、方法がないわけではない。それは、私が10年前に拙著「ブランドで競争する技術」(ダイヤモンド社)で提唱した「出島理論」を使い、全く別組織でゼロから新しいビジネスモデルを作りだすことだ。当然、この組織は社長直轄で経験豊富なプロと共同で立ち上げる必要がある。
さらに、3大プラットフォーマーに囲い込まれた顧客を奪い取る方法もある。それは、「ブランドを強くする」ことだ。日本のブランドは「分類名」に近く、顧客率を高める「ブランド」とはほど遠い。ブランドが強ければ、オンラインモールに出店しても顧客を奪われることはない。逆に、モールに出店して顧客認知度を高め、一気に引き上げ、オウンドメディアに誘引すれば良い。バーバリーのライセンスをイギリス本国へ返上した三陽商会は、クレストブリッジ・ブラックレーベルを立ち上げたが、やはり「バーバリー」の名前は偉大だった。多くの顧客は「バーバリー」という名前と一緒に、彼の地へ行ってしまったわけだ。こういう芸当ができれば、モールに対する反撃は理論上可能だ。だが、言うは易く行うは難しである。この点についても今後解説していきたいと思う。
*河合拓単独ウエビナーを9月30日に開催!
講演テーマは「アパレル産業の今と未来」
日時:9月30日 10:30-
時間無制限で、産業界の課題と将来像、および、参加者との徹底討論をしたいと思っています。お申し込みは、こちらまで
https://ameblo.jp/takukawai/entry-12693219873.html
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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