中古品拡大、新品は受注生産に、ユニクロは世界一へ!2030年、アパレル業界の未来はこうなる!13大予測

河合 拓
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消費者の変化③最新トレンドは個人が発信

 2030年、消費者は企業側から発信される「これが流行ります」という宣伝文句に辟易し、iPhoneにも企業広告は載せられない機能がデフォルトとなる。それ以上に、消費者はSNS上の仮想空間で繋がり、同一価値観を持つグループで繋がり、趣味を語り、あれがいいね、これは似合わないよね、と自分たちの価値観に最も合う等身大のファッションリーダーをSNSで見つけ、企業が作り上げたアイドルは支持されなくなってくる。

  瞬間的な映像や画像が好きな女子はインスタやTikTokを、理屈好きな男子はYouTubeを、そして、高齢者は自分たちの日記をFacebookにあげるなど、乱立するSNSも使い分けの時代が来るし、もっと斬新なSNSも生まれるだろう。我々年配組は「ついて行けない」と思うかもしれないが、若者は「もっとおもしろいアプリはないのか」と、逆に新しい技術を待っている。

  企業側は消費者の多様な価値観をうまく吸い上げ、自分たちのブランドの味付けを加えることで、服の提案をし、新品であれば受注生産、標準的な体形であればブランドが品質保証した中古品を提案するなど、お財布事情にあう商品提案をする。

 弱り切った日本市場にAmazonが本格投資を開始か

アマゾンのロゴ
アマゾンファッションが日本市場を本気で攻略すべく大量投資をしてくる可能性がある(2021年 ロイター/Pascal Rossignol)

 水面下でAmazonがファッション事業に激震を与えるだろう。無敵のデジタル企業、投資規模の桁が違い、米国で数々のアパレルを死に葬り去ったAmazonが、日本のアパレル市場で大した存在感を見せないまま消えてゆくはずがない。弱り切った経済とアパレル不況、そして、通販に吹いている追い風などを背景に、Amazonが世界第3位のファッション消費国である日本市場に一気に大量の資金投下をしてくることは想像に難くない。

  ましてや、今は、あの無敵のファーストリテイリングでさえ、ウイグル問題による米国での販売禁止、柳井氏の後継者問題、そして、秘蔵っ子だった堂前宣夫氏の良品計画社長就任や、減速感のある販売実績など、変化の時を迎えている。ほとんどのアパレルの苦境は言うに及ばずだ。ここにAmazonが空中戦を本格化してきたら、そして、その戦略が正しければ日本のアパレル産業はひとたまりもないだろう。今、私がもっとも注目しているのはAmazon fashionである。

 さて、私たちの大好きなファッションは、こうして、手軽に手に入れられるようになり、そして、ファッション業界は、日本の技術によって、もっとも環境に優しい優等生産業になり、日本は世界一おしゃれでお買い物上手なアジアのファッションリーダーとなる。最後に、今アパレル業界に求められているのは、こうした生活の提案力である。そして、技術というのは、こうした生活提案を実現化するための手段に過ぎない。部分的な技術を導入した、どのような素材を開発したなど、消費者にとって関係の無い話だ。

  企業は、すべての活動を消費者へのライフスタイル提案に集中させること。ここから全てがはじまる。

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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