中古品拡大、新品は受注生産に、ユニクロは世界一へ!2030年、アパレル業界の未来はこうなる!13大予測

河合 拓
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①中古品市場拡大、新製品は受注生産で少数の富裕層むけに

oonal/istock
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 まず、SDGsやサステイナブル経済への移行から、企業は商品を【作る】のでなく、消費者から【買い上げる】ようになり、それを世界一の補正技術で補修、再プレスして再販。多くの日本人は、ごく一部の富裕層を除き中古品を着るが、それらは新製品と全く遜色ない。アパレル企業は、今まで新商品を作ってはセールで見切り売りを繰り返し、赤字に陥ってきたがもう限界だろう

 また、SDGsの観点からも社会がそれを許さなくなり、ゴミとして破棄される繊維製品をブランドが責任をもって買い上げる制度を国が導入し、企業は衣料品の生産活動を大きく縮小。すばらしく綺麗な中古品の再販をする。これは、クルマの中古車市場をイメージすればよく分かる。綺麗に整備された中古車の中には、むしろプレミアムがつくものある。

 また、稼働率を高めなければ、そもそも存在し得ない川上合繊メーカの方々は、非衣料分野に成長を見いだすことが可能だ。非衣料分野の繊維市場は世界的に伸びており、私は、先日、外国人向け衛星放送でドイツ経済学者と日本の繊維技術の将来について討議したときも非衣料繊維の可能性と、将来の「固物」=something hard は、ほぼすべて丈夫で軽い繊維に置き換わる可能性があるという点で一致した。

 ②サブスク型衣料品の拡大

 いくら使えるお金が少なくても、女性が魅力的でありたいという気持ちは衰えないし、最近では、そこに男女比は少なくなっている。そして、ニーズがある限り、そこには工夫が生まれビジネスが発生する。貧しくなった日本の消費者達は、着回しがきいて長持ちする服はユニクロなどで購買しクローゼットに入れ、ハレの場の服はレンタルとなる

 ③共通機能の共有化、合併による巨大プラットフォームの出現

 ユニクロが圧倒的コスパで、あれだけの高品質商品を低価格で作れるのは2兆円という巨大な売上があるからだ。日本ではユニクロ以外のブランドは、どれだけ大きくても200億円が天井で、1000億円の企業と言っても、1020も小さいブランドの集合体であるのが実態だ。例えば、ユニクロでなくとも、g.u.は約2500億円程度。ブランド規模が違う。

  しかし、10年後、若くて柔軟な発想ができる商社かアパレルが業態を変え、デジタル技術を正しく活用し、我田引水型戦略でなく、バリューチェーン全体を巻き込み、チェーン全体で話し合い、誰がどこに投資を行って、どのようにリスクとプロフィットシェアをするかを合意形成し、場合によってはリスクマネーも呼び込みながら、SoftBankやセブン&アイ・ホールディングスのように、巨大な資金を集め産業改革を行い、世界中の工場や素材メーカが同一素材や工場を同一マスターにまとめるようになる。いわゆる、デジタルSPAだ。

  これまでアパレル企業は世界の企業と戦わず、日本だけで仕事をしてきた。世界に出て行き、何度失敗を繰り返しても世界化をなし遂げたのはファーストリテイリングと無印良品だけだった。経済は国境を越え、競争は世界戦になることは昔からわかっていたのに、常に将来を正しく予想し、チャレンジを繰り返してきた企業とそうでない企業の差が10年後にはハッキリでる。

「ユニクロネタ切れ」の噂がネット上を流れているが、あれだけの企業がネタをその場対応でつくっているはずがない。すでに、仕組み化されているのだ。アジアの混乱、そして、米中綿花の代理戦争が落ち着けば、成長を取り込める同社のポジションはますます強固になる。勝ち組を茶化す前に、まずは学ぶところを見定めるべきだと思う。

 次に、企業はどうなるか、考察をしていきたい。

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