すべて“自前主義”で店舗事業より高い利益率を実現=ヨドバシカメラ藤沢 和則副社長兼CIO
──ドライバーも自社で抱えているのは珍しいですね。
藤沢 この点はよく社内でも議論になります。しかし、オンラインでは購買体験の最後である「配送」がお客さまと唯一つながっているポイントです。お客さまの声を聞きやすいというメリットもあります。
自社で仕入れ、自社で販売しているものを、自社で配送する。とてもシンプルな考えです。
──昨年から配送業者のキャパシティ・オーバーが注目され、“宅配クライシス”と呼ばれて社会現象になりました。ヨドバシカメラは今の状況を見越して自社配送を拡大してきたのでしょうか。
藤沢 そうです。配送業者はもともとEC用にサプライチェーンをつくってきたわけではありません。ECが急拡大しているので、どこかで限界が来るだろうと予測していました。
──自社配送は今後も拡大しますか。
藤沢 ええ、順次拡大します。ただ、ドライバーは人員が集まりにくいので、無理して広げるという考えはありません。
──自社配送の対象エリアでは、注文から2時間半以内に配送する「ヨドバシエクストリーム」を展開されています。なぜ2時間半なのでしょうか。
藤沢 30分以内にピッキングし、2時間以内に配送するから2時間半です。ただ、そこまで速くするよりも、全体的なサービスを底上げするほうがよいのではないか、という意見も社内にあります。
再配達は24時間受け付けており、今は従業員が対応しています。できる限りお客さまの要望を知るためです。いずれシステム化していきたいと考えています。
店舗、ECで同じ販売価格、利益率はECが上回る
──ヨドバシ・ドット・コムの利用者層について教えてください。
藤沢 店頭とオンラインの両方を利用するお客さまが圧倒的に多いです。お客さまに都合のいいように使っていただければと思います。
家電製品はほかの商材に比べると、単価が高く、店頭で見て即決で買うというより、じっくり考えてから再び買いに来るお客さまが多くいます。店頭で見てもらったものを、オンラインでも買えるようにするというのはお客さまのニーズにも合っています。
一方、オンラインで注文し、帰宅途中などに店頭で受け取ってもらう「店舗受け取りサービス」の利用者も増えています。以前は店頭に置いている商品のピックアップがほとんどでしたが、店頭にはない品揃えの商品をピックアップされるお客さまが増えています。
店舗受け取りサービスは京急川崎店を除く全店で実施しており、営業時間外の受け取りに対応している店舗もあります。
──オンラインでの価格設定はどのようにしていますか。
藤沢 家電量販店は価格比較サイトの洗礼を始めに受けました。価格交渉や価格比較への対応も慣れています。
しかし、お客さまに価格を下げてほしいと言われて下げているようではダメです。ですから、ヨドバシカメラはオンラインと店頭で同じ価格にしています。
オンラインと店頭で同じ価格を出していると、「競合店に対応されるのではないか」という懸念もありましたが、それよりも透明性を確保することを優先しています。
──利益面についてお伺いします。17年3月期の経常利益は556億円で、売上高経常利益率は約8.4%と、業界トップクラスの水準です。EC事業の利益率は店舗事業と比べるといかがですか。
藤沢 基本的には店舗よりもオンラインのほうが利益率は高いです。自社配送を外部委託よりも効率的に運営できていることが送料をすべて無料にしても高利益率を維持できている要因の1つです。
──送料無料は今後も続けますか。
藤沢 はい、今のところ変えるつもりはありません。