ファッション誌凋落!メディア2.0時代のアパレルのマーケティング戦略とは

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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エモーショナルバリューを高めよ

 こうした時代、ただ事実を並べ、その事実の裏付けだけに命をかける従来型メディアよりも、消費者は、多少の定量的裏付けが正確でなくとも、その裏にあるメカニズムや因果律そして、事実と事実をつなぎ合わせるストーリーを求めている、と私は考えている。テレビの討論番組などを観ていると、日本人のディベートは、「この小数点が違う」など、私からいわせれば、部分の議論に終始し、全体感が見えない。非連続な対立から生まれる新しい発想、いわゆる「アウフヘーベン」を流行語大賞といって茶化し、結果的にクリエイティブな思考が弱い議論が露呈しているように見える。

 例えばエンタメの世界をみれば、原作はおおよそ日本の学校教育のアカデミックスマートといわれる人達が描いたものでない、漫画が原作が多く、もはや、世界的に、エンタメの世界は韓流(韓国)にまで完敗しており、Netflixでのトップ10はアニメか韓流だけになって、日本の作品は皆無となった。

  ハードスキルエリートが生み出すアウトプットは、工業製品としての完成度は高いが面白みに欠け、人の心をワクワク踊らせることはない。しかし、例えば、食べ物で言えば、ソースを使わず「醤油と塩」だけで、素材の味を出す「和食」が世界中で認められているように、日本人にエモーショナルバリュー(イメージ価値:ブランドで競争する技術 (ダイヤモンド社)を生み出す力が無いとは思わない。むしろ、われわれはこうした個人の力を封印してきた歴史がある。

  来るべき成熟社会、循環経済化でトップランナーに勝つためには、教育を含めた人材育成と活用方法を抜本的に見直す必要がある。今だからこそ、大きく「人の活用」の舵取りを変えないと、世界化に遅れ日本人が持つ世界的な価値が消え失せる可能性を危惧している。

  自らを否定する話となるが、前週に掲載した「企業価値算定」が非常に高いページビューを記録したことこそ、日本人が間違った方向に向かっている証左であると私は思う。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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