ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営13 脱賃料依存 テナントの企業成長からSCが収益を得る方法
コロナ禍が教えてくれた本当のテナント開発
どのビジネスでもリスクとリターンは表裏一体です。リスクを取るからこそリターンが着いてきます。これまで高い利益率を確保できたSCビジネスもコロナ禍でようやく他の産業と同様に相当の苦労とリスクを取り、工夫をしなければならない真っ当なビジネスになったのです(それに早く気づいて欲しい)。
これまで一等地と呼ばれていた都心が今は決して良い場所では無く、三等立地だった郊外が今は商業施設にとっては良い立地になり、倒産と整理が続くナショナルチェーンだけではテナント区画は埋まらない時代になりました。
今こそ、テナントを発掘し、育成し、企業成長を促し、配当と上場益を狙う本当のテナント開発にテナントリーシング業務を転換する時です。
したがって、今後、テナントリーシング担当者に必要なノウハウは、目利き、金融、証券、人物評価、企業診断など広範囲な知識と見識が必要とされます。
議論は「売れる/売れない」ではなく、「成長するか/しないか」に変わるのです。
テナントの企業成長はSC企業の成長
これまで新たにテナントを発掘し、成長し、そのテナントが多店舗展開を始めてもそこからリターンを得ることを出来ませんでした。
ましてや自SCの近隣に出店されると同テナントの売上低下を招くためテナントの近隣への出店を阻止していました。
しかし、この仕組みであればテナントの成長はイコールSC企業の成長となります。むしろ、そのテナントには多店舗化や利益の増加を大いに推奨することになるでしょう。
これまで「デベロッパーとテナントはイコールパートナー」と呼ばれてきました。しかし、これは村社会的なSC内でのコミュニケーションに限られていました。
しかし、今後はビジネスとしてイコールパートナーとすることが唯一SC事業に残された成長ベクトルです。
「SCとテナントはイコールパートナー」など昔の話です。今後は大家と店子の関係を大きく超えた「ビジネスパートナー」としてリスクの取り方を今一度、SCビジネスは考える時が来ているのです。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。
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