ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営10 アパレルと百貨店が生き残るための2つの戦略とは
アパレル経済の衰退とその理由
しかし、ニクソンショック、ドルの金兌換停止、固定平価制から変動相場制への移行など1970年代から世界経済が大きく転換し低成長経済へと突入する。そして90年代のバブルの崩壊とリーマンショックを経て百貨店の売上は91年を境に減少を始める。
その後、2005年からの人口減少社会の到来、12年の東日本大震災、そして今年のコロナ禍によって百貨店の衰退はますます進行し、とうとう百貨店が1店舗も無い県が出るに至っている。しかし、この人口減少は、百貨店だけでなく、SCにも大きなダメージを与える。したがって、近年進む百貨店のSC化(定期借家化)は決してブルーオーシャンではなく、レッドオーシャンの中の動きでしかないのである。
そして、今、多くの経験をした消費者は、これまでのようにアパレルをファッションと捉えることは減り、価格と機能性に価値基準に置くことになる。
実際支持されているのは、一人勝ちの様相を呈しているユニクロ、人気急上昇中のワークマン、家具のニトリなど、いずれも価格と機能性を兼ね備えたものに他ならない。
いまだに「おしゃれアイテム、有名バイヤーがセレクト、キレイめカジュアル、今年のトレンド、着こなし、かしこいアウター、大人のエレガント、新感覚、裾無しリブのラウンド仕様、スタイリッシュなシルエット」など並べたらキリが無いが、このような意味不明な言葉を並べているアパレルブランドは残念ながら低調を極めている。
アパレル衰退の理由は、このDCSオンラインで多くの専門家の皆様が分析しているので細かくはそちらに譲るが、その最も大きな理由は他でも無い「人口の減少」にある。
連載第2回でも触れたが日本の経済成長を支えた団塊世代は年間270万人生まれていたが昨年19年に生まれた数はわずか90万人と、3分の1まで低下している。要するに市場は3分の1になっているのだ。さらに驚くことに今般のコロナ禍によってこの減少は加速すると厚労省から発表があった。この半年、妊娠届が急減し、来年の出生数は80万人割れが予想されると言うのだ。コロナ禍は経済の停滞だけでなく人口の停滞までも引き起こすようである(図表2)。
紳士服(スーツ)の減退
アパレルの不調は婦人服に限らない。紳士服、特にスーツの売上が大きく減少し、最近の百貨店の紳士フロアの空き区画と仮囲いの増加は目を覆うものがある。
クールビズによってネクタイやスーツを着る機会は減り、IT企業やベンチャー企業などそもそもスーツを着ない(着る必要のない)社会人が増加し、コロナ禍によって拡大した在宅ワークによって外出着が不要となり、ますますスーツの出番は減少している。
筆者が社会に出た頃は、社会人(サラリーマン)になったら絶対にスーツを着るものと決まっていたが、今は少数派になってしまったようだ。
要するに、「人口数×人口の増加率×スーツ着用率=スーツの販売額」という公式において、人口数↓、人口増加率↓、スーツ着用率↓とパラメーターのすべてがマイナスになったのだから、その乗数の答えは当然、減少する。
この公式は、百貨店にも当てはまる。
「人口数×人口増加率×百貨店利用率=百貨店売上高」、この数字のどれかが一定でもどれかが上昇すればこの答えは上昇する。ところが人口数は減り、人口増加率が減る今、百貨店利用率を増加させなければこの公式の答えが減少するのは当然である。
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