破綻が迫るアパレル企業の事業再生手法#7 小さい企業が大企業に一泡吹かせる戦略とは
ECに対する誤解と過剰な期待
ECというのは、とかく誤解されている。先日のことだった。EC化率を高めたいからどうすればよいかとある企業から尋ねられた。その企業は、顧客の平均単価が5万円を超える高額商品を扱っているブランド企業。聞けば、コロナ禍でEC化率が低いため酷いダメージを受けているという。是が非でもEC率を高めなければならない、というわけだ。
しかし、EC販売を拡大させるのは企業ではなく、顧客である。顧客にとってECが魅力的であればECは拡大するし魅力的でなければ拡大しない。また、平均単価とEC販売額は、逆相関する。私がお付き合いのある世界的ジュエリー専門店では、「うちは、ECは最後になる。うちの倉庫の在庫簿価は、メガバンクの預金高よりも高い」といっていた。これだけの高級商品になると、おいそれとECで買えるはずがない。
確かに、中国ではECでクルマを買うほどだが、それは国民性の違いであって、日本人がネットで新車を買うなどということはない。つまり、ECの額を高めようとするなら、(その企業に関していうなら)リアル店舗の魅力を高め、ECへの潜在的消費者数を増やさなければならない。
ある金融機関から相談をうけたとき、彼らは「私たちがお金を貸しているアパレル企業は、広告宣伝費ばかり増やし利益率を悪化させているように見える」という。コロナ禍で巣ごもり消費が続き、人は外に出なくなったため外出着が不要となり、メディアで繰り返されるコロナの脅威にえも言えぬ不安を感じ消費を控えている。そんなとき、
「売れない構造」をしっかりと分析し、「売れる仕組み」や「しかけ」をきちんと設計することだ。ユニクロが先んじて、「新しい生活様式向けの衣料品」コレクションをだし、熱中症対策としてエアリズムマスクを出したのが良い例だ。少し考えれば、誰でもわかるのだが、なぜか、こうした取り組みはすべてユニクロから始まり、日本のアパレルは常に「ユニクロ右ならえ」である。
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