連載 スーパーマーケットの2020 #7 ヨークベニマル

森田 俊一
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東北にヨークベニマルあり――。東北地盤の食品スーパー(SM)、ヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)は群雄割拠のSM業界にあって“東北の雄”としての絶対的な存在感を発揮している。セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイ)グループでもあるヨークベニマルは今後、同グループのSM事業をけん引していく役割を担うことにもなりそうだ。

ヨークベニマル

ヨークベニマルの躍進支えた偉大な2人の経営者

 ヨークベニマルは1973年にイトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)と資本業務提携を締結した。当時のイトーヨーカ堂はコンビニエンスストア事業のヨークセブン(現セブン-イレブン・ジャパン)がまだ店舗展開を始めたばかりの時期。

 提携当初、ヨークベニマルはセブン&アイ現名誉会長の伊藤雅俊氏から「商い」のやり方を学び、鈴木敏文氏(現セブン&アイ名誉顧問)がイトーヨーカ堂の社長となり経営のバトンが渡った後は鈴木氏の徹底した管理型の経営を学んだ。ヨークベニマル経営陣は偉大な2人の経営者からもっとも近い距離で学び、それぞれの良さを取り込んできたのである。

「鈴木さんの厳格な経営は参考になります」

 筆者がかつてヨークベニマルを取材した際、当時社長だった故・大髙善二郎氏から聞いた鈴木敏文氏の印象だ。

 善二郎氏はどちらかというと「理論家タイプ」の経営者だ。提携当時、流通業界ではイトーヨーカ堂が先行していた時期。このイトーヨーカ堂から物流や情報システムを学びたいと考え、提携を推進したのが善二郎氏である。

 伊藤氏、鈴木氏から学んだ経営を武器に、東北のSMの雄としてさらに躍進していくヨークベニマル。流通業界では、傘下に入れた企業について、業績が良くなければ経営者の交代を迫るケースは少なくない。

 しかし、イトーヨーカ堂は提携後もヨークベニマルの主体性を尊重し、初代の大髙善雄氏、2代目の善兵衛氏、3代目の善二郎氏、そして現在会長の善興氏と、大髙家の血筋で経営は脈々と受け継がれている。

 とくに現会長の善興氏は、セブン&アイのプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」のグループMD改革プロジェクトリーダーを務め、開発の主体としてプロジェクトを率いている。セブン&アイグループへの貢献度も高い。

7&iの食品スーパー戦略のカギとなる?

 北海道地盤のアークス(横山清社長)が南下作戦を展開するなど、ヨークベニマルの商勢圏は競争が激化しつつある。そうした中でも、ヨークベニマルの業績は安定しており、20年2月期業績は、営業収益が対前期比0.3%増の4468億円と横ばいで営業利益は同2.3%増の131億円だった。今期(21年2月期)に入ってからは、コロナ禍による巣篭もり特需も追い風となり、第1四半期の営業収益は対前年同期比9.1%増、営業利益は同82.7%増と大幅に伸長している。

 そんなヨークベニマルは今後、セブン&アイグループの経営のなかでどのような役割を果たしていくのだろうか。

 セブン&アイは20年6月、首都圏の食品スーパー事業を再編し、首都圏でSM事業を展開していたヨークマートをヨーク(東京都/大竹正人社長)に商号を変更。ヨークにイトーヨーカ堂運営のSM業態を統合した。

 旧ヨークマートとヨークベニマルは10年ごろから、管理部門の統合などを進めている。今回のヨークを軸にしたセブン&アイのSM事業の再編により、グループにおける首都圏SM戦略の新たな枠組みが出来上がった。グループのSMとしては“先輩格”となるヨークベニマルが、どのような位置付けとなるか。注目を集めている。

 流通業界ではセブン&アイ最大のライバルであるイオン(千葉県/吉田昭夫社長)でもSM事業の再編を進めている。2大流通グループは今後、商品やシステム、物流などを含めた“総合力“を競うことになるのは必至だ。そして、この競争において、「地域密着」を知り尽くしたヨークベニマルの経営ノウハウが、存在感を発揮することになりそうだ。

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