アパレルの離職率低下のためにすべきこと、やってはいけないこととは

河合 拓 (FPT Consulting Japan Managing Director)

ファッション好きの販売員の力が売上を決め、販管費「率」を押し下げる!

Asia-Pacific Images Studio/istock
Asia-Pacific Images Studio/istock

 さて、同じようにアパレル業界には、ファッション大好き人間、ライフスタイルもおしゃれに飾りたいという人間が集まっている。社員割引が効くとはいえ、数万円もするパンツやジャケットを自腹で購入するため、そう簡単にお金が溜まらないのである。だから私は、入社時の金額でなく「生涯年収」を高くして、長く勤めれば務めるほど金がたまるような給与カーブを推奨するのである。

 アパレルの、特にセレクトショップのような業態は、販売員の力が営業力と強い相関性があり、その店舗の売上は、販売員の質に依拠する。

 アパレルビジネスで課題になっているのは、原価ではなく販管費であることは過去散々述べたとおりだ。原価をこれ以上安くしてもインパクトは少なく、むしろ販管費をどうコントロールして効率的に売上につなげるかが求められているのである。

 そして、販管費の中でもっとも重要な指標は「店舗内の人時生産性」であることは、さまざまな指標を用いて過去に証明したとおりだ。

 つまり、少ない販売員が大口顧客を何人も持ち、大きな売上を上げれば上げるほど、売上に占める経費の「割合」である売上高販管費比率は大きく下がり、利益率は上がる。

 ユニクロは、この考えを「もう一歩」前進させて、少ない人員での店舗運営を目指している。可能な限りVMD で勝手に売れる仕組みを作り、販売員の仕事を難易度の高い領域に絞る、あるいは、その仕事さえデジタル技術でなくしてしまい、人時生産性を大きく上げている。もちろんこのやり方が有効に働くのは、ベーシックで色や形が容易に想像できる商品に限るわけだが、同社はまさに、そのベーシックの「組み合わせ」で、着こなしの提案までしているわけだ。

1 2 3

記事執筆者

河合 拓 / FPT Consulting Japan Managing Director

Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はDX戦略などアパレル産業以外に業務を拡大


著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

お問い合わせは以下のメールアドレスより

 

 

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2025 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態