食品スーパーで服を売るための「たった1つの方法」

河合 拓 (FPT Consulting Japan Managing Director)

近年、食品スーパーや総合スーパーが衣料売場を縮小・撤退する例が相次いでいる。イトーヨーカ堂(東京都)は衣料のフルライン展開を解体し、プライベートブランド(PB)の肌着・日常衣料へ集約した。西友(東京都)は衣料売場を圧縮し、靴下・下着などのコモディティ中心へ転換した。そして、スーパー内にインショップを展開していたアダストリア(東京都)も、食品スーパー型店舗からの撤退を決定した。理由は明快である。「顧客導線と滞在時間が衣料購買に適さず、収益性が成立しない」ためだ。
これらの事例は、現場がすでに答えを提示している。つまり、食品スーパーでファッション品を売ることは、構造的に成立しない。

Danilin/iStock

決定的理由は「会計制度」にある

 最大のボトルネックは、一般には気づかれにくい原価計算方式にある。食品スーパーや百貨店は衣料の原価算出に売価還元法を用いる。これは「似た商品群をまとめて平均原価で粗利を把握する」方式であり、単品単位の利益貢献が見えない。つまり、売れ筋と死筋を判別できず、値下げ損失の影響も明確に測れない。結果、MDが“感覚”に依存するし、酷いケースになると、原価が極端に安い商品を無理やり出荷し、決算期の帳尻合わせをしているケースもあった。

 一方、アパレルは実際原価法そして、AIを活用した個別原価管理で成立する産業である。アイテム単位で粗利・消化率・回転を把握し、商品ABCやQR(追加生産・適正在庫補充)を回すことで収益を成立させている。

 つまり、食品スーパーの会計制度では、

• SKU差による利益差分が見えず
• 在庫ロスを正しく評価できず
• 撤退・補充の判断ができない

ため、ファッション型MDは構造的に成立しない。

 私も「平場改革」を何度も行ってきたが、限界は常に構造にあった。私はこれまで、食品スーパーや百貨店のPBや平場衣料売場改革に多数関わった。VMD刷新、SKU絞り込み、棚効率改善、導線と滞留の再設計……。現場は動き、売場は変わり、売上は改善した。しかし、改善しても110%が精々である。

 なぜか。余剰在庫ロスを正しく計上すれば、利益はむしろマイナスになるからだ。つまり、「売れているように見える」構造は、実際には死筋在庫が利益を溶かしている。この構造を見抜けない限り、衣料売場は再生しない。

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記事執筆者

河合 拓 / FPT Consulting Japan Managing Director

Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はDX戦略などアパレル産業以外に業務を拡大


著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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