ユニクロ過去最高益を更新 トランプ関税への備えと個店経営強化が示す意味

河合 拓 (FPT Consulting Japan Managing Director)
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皆さまご無沙汰しています。しばらく取材を含めた休養期間を取らせていただき、「アパレル改造論」を楽しみにされていた方には申し訳ありませんでした。ややペースダウンするかもしれませんが、今までどおりアパレル業界に対しての私の分析や提言を書いて参りますので、今後とも変わらぬご支援をよしくお願いいたします。

上期決算は増収増益! 中国事業リカバリーの成果は?

 さて、今回はファーストリテイリングの2025年8月期上期の連結業績の分析から入ろう。同社の最高益更新は、私は以前の論考で予測していたので想定内だったが、本稿の要点はその秘訣を紐解いて、ファーストリテイリング圧勝のメカニズムを分析するところにある。

 やや、時期的に遅れたが、同社の売上収益は1兆7901億円(対前年同期比12.0%増)、営業利益は3042億円(同18.3%増)と、大幅な増収増益だった。非の打ち所が無い同社の経営だが、皆さんの気になるところは、唯一減益となった中国市場のリカバリーの信憑性、そして、トランプ関税に対する影響はどこまでか、ということではないだろうか。本日はこの2点を中心にファーストリテイリングの特徴を抜き出し、私の分析をご披露したい。

 まず、「アパレル産業は輸入産業であるため、円安が進むと海外調達費用が増える」というのはドメスティック中心に事業を展開している企業にあてはまる話で、ファーストリテイリングのように、海外の売上比率が大きい企業は円建て資産が増えるため、円安はむしろ有利に働く。このあたり、決算説明会で現地通貨ベースで状況を説明していた同社の姿勢は非常に好感が持てる。以下がエリア別、売上収益の為替差益だ。これも、国際企業ならではの同社の強みと言えるだろう。

 次に、エリア別の業績を見てみよう。以下は、ユニクロ国内事業の上期実績だ。

 見ての通り、大幅な増収増益で、防寒着の在庫が十分あったことを勝ちの要因とみているようだ。

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記事執筆者

河合 拓 / FPT Consulting Japan Managing Director

Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はDX戦略などアパレル産業以外に業務を拡大


著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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